オーストリアのアナログICメーカーaustriamicrosystems(ams)は6月6日、高速回転中に正確な角度測定を可能とする磁気ロータリーポジションセンサIC「AS5132」を発表した。すでに量産出荷を開始している。

同製品は、ホール素子やアナログフロントエンド(AFE)、DSPを1チップ化したSoCで、小型かつ堅牢で、組み込みも容易であり、外乱磁場による干渉に対しても高い耐性を発揮することから、非接触ロータリーポジションセンシングやロータリースイッチ(ヒューマン・マシン・インタフェース)、AC/DCモータポジションコントロール、ポンプBLDCモータ(停止/起動システム)やステアリング・コラムBLDCモータなどの自動車アプリケーションでのBLDCモータポジションコントロールなどに適していると同社では説明している。

今回、高速時に顕著な伝搬遅延による角度エラーを補正することで、前世代の磁気エンコーダより改善した。エラー補正は、一体化されたフロントエンドでのひずみ修正機能によって実行される。これにより、外部のソフトウェアルーティンの実行を必要とせず、これらの設定を簡単にできるため、ホストのMCUや電子コントロールユニット(ECU)の負荷を軽減する。また、回転速度の変動など作動状態の変化に対応して、デバイスの作動中にも設定変更できる。

さらに、シグナルプロセシング回路は、伝搬遅延時間を22μs未満に抑えられるので、フロントエンドひずみ修正を実行する前でも、角度エラーが小さいという。少ない伝搬遅延と高度なひずみ修正は、モータが8万rpmという速度で回転している場合でも、正確な角度測定(精度±3度以内)を実現。ダイナミックレンジ全体にわたって、高速アプリケーションでも、高いレベルで安定したトルクを達成できる。

AS5132は、単純な二極磁石と組み合わせにより、8.5ビットの分解能または1回転当たり360ポイントでの角度測定ができる。測定はシリアル出力で、あるいはパルス幅変調(PWM)シグナルでも可能。また、追加のU、V、W出力は、BLDCモータのブロック(方形波)通信に使用できる他、インクリメンタル・シグナル(ABI)も使用できる。さらに、これら角度情報に加え、磁場の強さも5ビット値で表示される。

零点位置は、生産ラインでソフトウェアによるセッティングが可能。磁石が固定された開始位置に精密に調整されている必要がないため、このセッティングは、組み立てをシンプルにするという。

磁気ロータリーポジションセンサIC「AS5132」のブロックダイアグラム