Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは6月5日、低消費電力のMEMS加速度センサ「ADXL362」を発表した。

同社インダストリー&インスツルメンテーション・セグメント ヘルスケア・セグメント ディレクターの高田幹也氏は、同製品について、「低消費電力化により、従来は機械処理だった部分の置き換えや、医療/ヘルスケア分野など適用できるアプリケーションの範囲を拡大することが可能になる」としており、「Stabirity」「Vibration」「Ultra Low Power」の3つの視点で機能強化を図っていくことで、幅広い分野に自社のMEMS慣性センサの適用を図っていくことを強調した。

低消費電力により、センサを適用できる範囲が大きく広がることとなる

同製品はモーション・センシング・ウェークアップモード動作時の消費電流が競合他社の同レベルのセンサと比べて約60%低い300nA(6Hzサンプリング時)を実現。フル測定モードでもデータレート100Hz時(2V駆動)で同約80%低い消費電流2μAを実現、スリープモード電流も10nAを実現しているという。

駆動電力を10μAから2μAに低減することで、バッテリの長寿命化が可能となり、これにより局所での利用など、メンテナンスが難しいところにも適用可能になるというのが同社の主張

また、システムレベルでの電力効率向上を可能とする機能を搭載しており、これによりインテリジェントな連続動作を必要とするモーション起動スイッチとして活用することが可能だ。アウェーク・ステータス出力用ピンを搭載していることから、システム機能をオンにするスイッチを即座に始動させることが可能なほか、これらのスイッチをプロセッサを経由せずに動作させることが可能なため、消費電力のさらなる低減も可能だという。

加えて、改良されたサンプル・アクティビティ検出機能も搭載。これにより誤検出によりセンサがシステムを不必要にオンすることを防ぐことができ、バッテリの消耗を抑えることが可能になるという。

通常は12ビットの分解能で加速度データを出力するが、低分解能でも良い場合については、より効率的な1バイト転送向けに8ビット・フォーマットのデータ出力も可能。測定レンジは±2/4/8g、分解能は±2gで1mg/LSBだという。

ADXL362の各種特長

同社インダストリー&インスツルメンテーション・セグメント センサー・グループ マネージャーの永井郁氏は、「2μA常時駆動の実現により、数年から10年のバッテリ寿命が実現可能となり、給電や充電、電池交換ができない、または交換に伴うリスクを伴う用途などでも利用が可能となる」とし、給電やバッテリ交換が難しいパイプラインや高所の建設現場などの広域施設インフラや高所などの危険な場所のモニタリング用途、家庭での療養を行っている患者が常時に見つけるモニタリング機器、家畜や動物の健康状態モニタリングといった新規分野への適用が見込めるとする。すでに米国防総省国防高等研究事業局(DARPA:Defense Advanced Research Projects Agency)が、米軍での負傷者の重症度や緊急性を分別するトリアージのためのスクリーニングツール「Blast Gauge」の第2世代品に実装することを決定。爆風などに曝され負傷した兵などの選別に活用されるほか、外傷性脳損傷(TBI)の原因究明を進めている研究団体などに向けたデータ提供が行われることが決定しているという。

なお、同製品はすでにサンプル出荷を開始しており、1000個受注時の単価は3.97ドル(米国での提供価格)。2012年8月からの量産出荷を予定している。