近畿大学は、水に溶けたセシウムをろ過して99%以上取り除くことができ、かつ建築物の壁や床材として使える強度を備える漆喰の開発に成功したことを発表した。同成果は、同大の森村毅非常勤講師(元教授・工学部)、多賀淳講師(薬学部)ならびに石渡俊二 准教授(薬学部)、緒方文彦 助教(薬学部)、原子力研究所の伊藤哲夫 教授、山西弘城 准教授らによるもの。

ゼオライトを混合した漆喰は従来、防臭・脱臭などにすぐれた建材として活用されてきたが、耐水性がないうえ強度が小さく、崩れやすい欠点があり、今回の開発では、これらの欠点の克服を目指して行われた。

カルシウムイオン水で漆喰の強度を上げる技術は、2010年に森村元教授が、建築舎ゆわんと村と共同開発した高強度漆喰で使われたものを活用しており、開発された「ゼオCa(カルシウム)漆喰」は、漆喰製造時にゼオライトを石灰重量の3~4倍で混合したほか、製造時にカルシウムイオン水を添加することで、カルシウムイオン水を添加していないゼオライト漆喰に比べ2~3倍の強度を確保した。また、水が浸透しやすい性質も備えさせており、セシウム水溶液を「ゼオCa漆喰」でろ過する実験では、セシウムの99%以上が「ゼオCa漆喰」に吸着したことが確認されたという。

同漆喰の用途としては、セシウムで汚染された水や物質を浄化するフィルター兼建材が想定される。セシウム汚染水では、汚染水を「ゼオCa漆喰」に通すことで、セシウムとセシウムを含む物質をろ過でき、汚染物質については、水で土やほこりなどのセシウム吸着物を剥離してからろ過することができる。

また、「ゼオCa漆喰」は、きわめて細かい孔が無数にある構造をしているため、目詰まりを起こしにくいのが特徴であり、これにより、土などの固形物を含む汚染水をろ過する場合でも、目詰まりを少なくできるという。また、「ゼオCa漆喰」は建材としての強度があるため、セシウム汚染物質からセシウムを除去・封じ込めるための施設において建材として活用できる可能性があるという。

なお、研究グループでは今後、「ゼオCa漆喰」のさまざまな活用方法の検討ならびに「ゼオCa漆喰」の建材としての性能およびセシウム吸着能力のさらなる向上などの研究を進めていく予定としている。