ウォッチガード・テクノロジーは5月15~17日の3日間、タイのプーケットにて同社の販売パートナー企業向けのイベント「WATCHGUARD ASIA PACIFIC PARTNER CONFERENCE 2012」を開催。本稿では同社CEO ジョー・ワン氏とAPAC(アジア太平洋地域)担当副社長 スコット・ロバートソン氏の発表内容を中心に、同社の2012年以降の成長戦略について簡単に紹介しておこう。

「WATCHGUARD ASIA PACIFIC PARTNER CONFERENCE 2012」の会場となったのは「ルメリディアン・プーケットビーチリゾート」

「50~500人」のミッドレンジで5年以内にシェアNo.1を目指す

ウォッチガード・テクノロジー CEO ジョー・ワン氏

同社はUTM(統合脅威管理アプライアンス)市場において、すでにこの5年間で50~100人のユーザー規模を持つ顧客向け製品ではシェアNo.1を獲得しているとのことだが、今後5年間では、さらに「50~500人のユーザー規模の顧客向け製品でもシェアNo.1を獲得する」(同社CEO ジョー・ワン氏)という目標を掲げている。

その根拠となっているのは、年率15%の成長を達成してきた2007年以降の同社の業績であり、「この勢いは今後も続く」(同氏)という見通しにある。

同社はセキュリティ分野の市場において15年間のビジネス実績を持つが、2007年以降の5年間を「新たなウォッチガード」と位置づけている。この「新たな」とは、同氏を含む経営層の人材がほぼ一新されたことと、2010年に新たな製品ラインが加わったことを示す。

50~500人のユーザー規模の顧客向け製品でもシェアNo.1を目指す

製品の観点でこれまでの同社の実績の基盤となってきたのは、2つの"柔軟性"である。

1つ目はローエンド向けにはフリースケール、ハイエンド向けにはインテルのチップセット……など、要件に応じて最適なハードウェアを製品に搭載することを意味する「ハードウェアの柔軟性」、2つ目は、たとえばアンチウイルス機能にAVG、URLフィルタリングではウェブセンスの技術を採用するなど、分野に特化した専門企業の優れた技術を適材適所の"機能"として実装する「ソフトウェアの柔軟性」だ。これらは「Best in Class、Best of Breed」と呼ばれる2011年までの成長戦略でもあったが、今後も継続的に実施される。

加えて2011年は同社にとって、「500~5000人のユーザー規模のセグメントが大きく成長(このセグメントに限れば年率成長率が34%)した」(同氏)とのことであり、同社としてもこのようなハイエンド市場の可能性も成長のポイントの1つになると位置づけている。

なお、顧客のサポート要件が厳しくなるハイエンド市場のニーズに対応するため、同社では現在、前年比で20%増となる人材拡充を行っており、顧客サポートや技術サポートへの対応力の強化を図っているという。

ハイエンド市場も同社にとって「ポテンシャルが大きい」(同社CEO ジョー・ワン氏)成長のカギを握る要素

総じてUTMの市場は参入ベンダーの増加により競争が激化する傾向にあるが、この状況は逆に「UTM市場が成長市場である証拠」(同氏)とし、上述のような積み上げと、発表済みの仮想環境向け製品「XTMv」が同社のさらなる成長を牽引する要素として示されている。

APACと日本市場について

APAC担当副社長 スコット・ロバートソン氏

同社APAC担当副社長 スコット・ロバートソン氏は、グローバルマーケットにおけるAPAC市場の概況について説明を行ったが、その中でも日本市場において利益率の高いビジネスを実現している同社のパートナー企業 アルテミス社の成功事例を真っ先に紹介。この成功事例を同氏のホームグラウンドであるオーストラリア市場でも適用できないかどうか検討していることを明らかにするなど、日本市場に対する期待値の高さを示した。

APAC市場ではこれまで1~99人のユーザー規模のSMBマーケットが全体の98%を占めているが、現在はその上のミッドレンジが現在伸張している状況だという。同氏はその内容について「新規顧客を獲得していることが大きい」と評価しており、日本市場においても同社は今後も引き続きこのようなミッドレンジへの注力を継続するほか、グローバルの戦略に基づき、上述の仮想環境向け製品「XTMv」の拡販を図る。

なお、今回のイベントとプレス向けに行われたセッションを通じて両氏が繰り返し強調したのは「Value(価値)」という言葉である。この言葉には多くの意味が含まれているのだが、「車の価値を示す物差しが"値段"ではないのと同じように、UTMの価値も"値段"が決めるものではない」(ジョー・ワン氏)という。

その具体例としてスコット・ロバートソン氏は、同社のUTM製品が商談の入口となり、最終的にサーバ統合なども含めたソリューションの一括導入に至ったオーストラリアでのパートナー企業の案件の事例をもとに、「今後のパートナー企業は単なる販社ではなく、顧客の良き"相談役"にもなりえる」として、これが「Value(価値)」の提供につながると語り、APAC地域のパートナー企業への期待を示すとともに成功への奮起を促した。

同社の成長を牽引する要因はいくつか示されているが、とりわけAPAC市場については「ミッドレンジ市場と仮想環境向け製品への注力」が強調されていた

オマケ: イベント会場になぜか突如登場した象