東京大学(東大)は4月3日、好熱性水素細菌において、新規の酸化ストレス防御酵素が働いていることを発見したと発表した。

成果は、東大大学院農学生命科学研究科応用生命工学専攻の五十嵐泰夫教授、同若木高善教授、同石井正治准教授、同伏信進矢准教授、同新井博之助教、同博士課程2年の佐藤由也氏、富山県立大学生物工学研究センターの亀谷将文研究員(当時日本学術振興会特別研究員DC)らの研究グループによるもの。研究の詳細な内容は、米オンライン科学誌「PLoS ONE」に掲載された。

酸素は地球上に豊富に存在する分子であり、いうまでもないが、多くの生物が酸素を使った呼吸によりエネルギーを獲得している。

しかし、酸素を細胞内に取り入れることにはリスクも伴い、酸素の利用により発生する活性酸素種は生体分子にダメージを与えてしまう。そのため、生物はそれらから身を守る防御システムを有しているというわけだ。

一方、古い進化的起源を有する古細菌や一部の細菌からは、酸素存在下では生育できないものが多く見つかっている。今回の研究で取り扱った「Hydrogenobacter thermophilus」も古い起源を有する細菌の1つで、酸化ストレスに弱い代謝系を持っているのが特徴だ。

しかし、同菌は例外的に酸素存在下で旺盛に生育するという特徴も有する。そこで研究グループは、同菌の酸化ストレス防御機構に着目し、解析を行ったのである。

研究グループはゲノム情報から、あるタンパク質(「Ferriperoxin(Fpx)」と命名)に着目。Fpxは、ほかの菌で活性酸素種分解酵素として機能することが知られている「Rubrerythrin(Rbr)」と相同性を示すことが判明した。

しかし、Rbrは2つのドメインから構成されているのに対し、Fpxはその片方のドメインしか持っていないという違いもわかった(画像1)。そこで研究グループはFpxの機能解析を進め、活性酸素種分解能を持つことを明らかにしたのである。

画像1。FpxとRbrの比較

続いて、細胞内での機能を明らかにするため、この遺伝子を破壊した株を構築。さまざまな酸素濃度で同菌の生育を観察すると、遺伝子破壊株は酸素が多く存在する環境では生育できないことがわかった。この酵素が好気的な生育に必須であることが示されたのである(画像2)。

画像2はfpx遺伝子破壊株の生育曲線を野生株と比較したもので、酸素濃度が左から10%(好気条件)、2%(微好気条件)、0%(嫌気条件)。酸素濃度が0~2%の範囲だと両株とも同様の生育を示すが、酸素濃度が10%になると、破壊株は生育できないのがわかる。このことから、fpx遺伝子が好気生育に必須であることが示されたというわけだ。

画像2。fpx遺伝子破壊株の生育曲線

さらに、立体構造のモデリング解析とほかのホモログとの配列比較により、Fpxが熱安定性に有利な構造を採っていることが示唆された。また、系統解析からは、FpxはRbrの祖先型であることも示唆されたのである。

進化的に古い起源を有する同菌が、進化的に古いと思われる酸化ストレス防御機構を持つことは興味深いことと、研究グループはコメント。今回の研究の結果は、生物の酸素関連代謝の進化を論じる上で重要であると考えられるとしている。