日本マイクロソフトは9日、「震災復興とICT」と題したカンファレンスを、参議院議員会館で開催した。このカンファレンスは、東日本大震災から一年が経過するにあたり、情報通信手段が絶たれた被災地と支援者とをつないだ、国、地方公共団体、NPO、大学、企業などのステークホールダーが連携について改めて振り返り、学びを得るために開催されたもの。

カンファレンスでは、各代表が集まり、意見交換を行うパネルディスカッションが行われた。

日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口 泰行氏

カンファレンスの冒頭では、実行委員長を務める日本マイクロソフト 代表執行役 社長 樋口 泰行氏が挨拶し、「日本マイクロソフトも微力ではあるが、震災直後から政府、自治体、NPO、パートナー企業と連携して、クラウドを切り口にしなから復興活動に取り組んできた。復興支援では、ネットワークでつながっていること自体が貴重であるということを改めて感じるとともに、現場では、何かをまとめようとするとExcelが必要になり、パソコンの力というものも改めて認識した。今日が震災を振り返るだけではなく、次の震災に備えて平時からの準備体制を整えるための資材になることを期待している」と述べた。

IPAは、クラウドサービスが東日本大震災に際しての緊急支援に役立てられた事例として、「東日本大震災に際して提供されたクラウドサービスの事例集」を公開しているが、続く基調講演では、米Microsoft インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ クルトワ氏も、復興支援におけるクラウドコンピューティングの重要性を語った。

米Microsoft インターナショナル プレジデントのジャンフィリップ クルトワ氏

同氏はまず、「Microsoftは、世界各地での災害、悲劇に立ち向かう人々を最優先で支援しており、こういった経験を積み重ねる中で得た新しい知識が、今回のような惨劇で活かされるのではないかと思っている」と、同社が積極的に支援活動を行っている点を説明。そして、同氏は、Microsoftが最近支援した例として、ハイチを挙げた。

ハイチでは2010年1月に大地震が発生し、人口の25%が家を失った。この時、Microsoftは情報を一元的に管理するためのポータルを構築し、シームレスに情報交換ができる環境を提供、大きな成果があったという。

そして同氏は、「今回の東日本大震災においては、文部科学省が提供したモニタリングポストのサイトや経済産業省が提供した復興支援のためのデータベースは、国民のニーズに短期間で応える見本になっており、将来、このような災害が発生した際には、この経験が活かされるだろう」と、日本の取り組みを評価した。

同氏は、災害復興時におけるクラウドコンピューティングの有用性を強調。その理由として、クラウドコンピューティングが、災害発生時など、必要になった時に必要な分だけ利用できる点を挙げた。

ただ、クラウドコンピューティングには、プライバシーという懸念材料もあり、これに対しては、革新的な技術、立法府、政策、研修訓練など組み合わせたエコシステムが必要で、国民からクラウドコンピューティングに対する信頼を得るには、「個人情報をなぜ集め、どのように利用するかということに責任を持たなければならない」と述べた。

そして最後にクルトワ氏は、クラウドは雇用創出にも役立つとし、「スペインでは、クラウドコンピューティングを観光業界でも進めていこうという取り組みを行っている。世界では、12人に1人が観光業に携わっていると言われており、世界GDPの5%に相当する。観光業における人々の購買はオンライン情報に左右されるので、今後、世界から多くの観光客を迎えようとする日本においても、クラウドコンピューティングは積極的な役割を果たすだろう」と語った。