クライアント管理の自動化に取り組むKaseyaは、数年前からOSマイグレーションに注力している。特にターゲットとなっているのは、サポート終了が間近に迫ったWindows XPからのマイグレーションだ。来日した同社CEOと社長にWindowsマイグレーションにおけるKaseyaの有用性などを聞いた。

創業者でKaseya社長のマーク・サザーランド氏

「Kaseyaはユニークなポジションにある。エージェントレスで利用することができ、PC全体の完全なイメージ作成や動きの把握ができ、どう使われているのか、何が入っているのかを調査できる。これはマシンの乗り換えに非常に有効な機能だ」と語ったのは、創業者でKaseya社長のマーク・サザーランド氏だ。

Kaseyaはネットワークに接続されたPCのOS環境やアプリケーションなどの把握を行えるほか、ソフトウェアの自動インストールやパッチマネジメント、環境のバックアップと復元などをリモートで行うことができる。大量のクライアント端末を1人の管理者が統合管理できるのが大きな特徴だ。Windowsのマイグレーションに利用する場合も、少数の技術者で大量端末に対応できることで注目されている。

「展開が非常に簡単であること、高度に自動化されていること、企業ごとにカスタマイズもできることなどが特徴。Kaseyaでマイグレーションを行えば、実際のマイグレーション作業そのものは1時間で展開できる」とサザーランド氏は語った。

Kaseyaを利用した場合、通常のOSマイグレーションに比べて作業が大きく簡略化され、作業時間とコストも圧縮できる。しかし、万能ではないのも確かだ。

Kaseya会長兼CEO ジェラルド・ブラッキー氏

「何が入っているのかを把握し、そのうちどれをマイグレーションして、どれはしないのか。それを決めるのが大事だ」と指摘したのは、Kaseya会長兼CEO ジェラルド・ブラッキー氏だ。

過去にはWindows 2000からWindows 7という世代を大きく飛び越えてのマイグレーションや、Microsoft Office 2000が稼働する環境でのマイグレーションなど、完全な環境移植を目指すには厳しい案件もあったという。しかし、そうした場合でも、主要なデータファイルの移行を行ったり、基本的なPC環境のみを移植した後で新環境下でOfficeファイルの変換処理を行うなど、できる限りの対応をしてきている。

「日本においては、アプリケーション対応力のあるパートナーと協力しての展開を行っており、業務アプリケーションなどで動かないものがあった場合にはパートナーの力を借りて対応したい」とKaseya Japan社長の北原信之氏は語った。

タイミング的にはWindows 8の発売も迫っており、できることならば一気に最新OSへと乗り換えたい企業もあるだろう。しかし、新OS登場を待つという選択は、あまり勧められないという。

「技術進化が早いため新しいものがよく見えるが、マイグレーションは企業ごとのタイミングに合わせてやるべきだ。リプレースタイミングに合わせることが重要で、タイミングによっては2種のOSが混在し、両方サポートしなければならない状況になるだろうが、Kaseyaならばそれも自動化できる」とサザーランド氏は語る。

Kaseyaは単純な環境移植ツールではないため、導入後にはそのままクライアント管理ツールとして活用できる。マルチOS環境でも対応できるため、導入時期が異なるマシンが社内に点在している場合、リプレース時期を迎えたものから順にWindows 7へ移行させながら、一時的にOSが混在する状況になっても問題なく管理することが可能だ。

「おもしろいことに、世界共通で自分のエリアはWindows XPからのマイグレーションが遅れていると感じているようだ。我々から見ると、アメリカもヨーロッパもアジアも近い状況にある。すべてのPCを一度にマイグレーションすべきだとは考えていない。また、マイグレーション需要だけではなく、すでにWindows 7を導入している企業にもKaseyaの有用性を伝えたい」とサザーランド氏は語った。

また、Windows以外のOSも管理対象とするKaseyaは、現在急速に普及しているスマートフォンの管理も可能としている。すでにiOS、Android、Blackberryは対象としており、今後はWindowsPhoneも管理可能になる予定だ。デバイス単位ではなくユーザー単位の管理を行うことで、PCとスマートフォンを同一のユーザーが利用していることを認識した対応なども可能だという。

「KaseyaはOSメーカーと密にやりとりをしているため、初期のベータ版で開発を行える。そのため、OS発売日には新OSに対応可能だ」とサザーランド氏。次期OSとなるWindows 8への対応はもちろん、頻繁にアップデートされるAndroidへの対応にもぬかりはないという。

2012年のフォーカスポイントとして挙げられたのは、機能の統合とセキュリティ機能の強化だ。

「散在している機能を統合したい。セキュリティ対応として、接続端末をスキャンして条件を満たしているもののみを企業ネットワークに接続させるなどの運用にも対応したい」とサザーランド氏は語る。

また、管理者負担をより低減する取り組みも進められるようだ。「1枚のブラウザを開けば、あらゆるITの管理ができるようにしたい。これが実現すれば、管理業務の60~70%が一元化できるだろう」とブラッキー氏は語った。