Lynxの意義

さて、Lynxのようなテキストブラウザは、なぜ必要であったのか?その答えの1つは、当時の環境に大きく依存している。インターネットがまだ一般に普及していない頃(PCでいえば、Windows以前の頃)、実際にWebサイトの閲覧をするには、UNIXなどのワークステーションを使う必要があった。さらに、グラフィカルな表示を行うためには、X Window Sysyemが必要となった。当時のLAN環境では、UNIXのサーバーにシリアル回線経由で、Telnet接続することが一般的であった。もちろん、回線速度からも文字データの送受のみとなる。そんな環境でも、Webのデータくらいは見たい、知りたいという要望にこたえるのが、Lynxの役目であったはずだ。実際に、PC UNIX側にLynxをインストールし、Windows側にTelnet接続のためのソフト(TeraTerm)をインストールして、PC UNIX側のLynxを起動したのが、図16である。

図16 TeraTermでLynx

文字ベースの環境でも、Webサイトの文字データだけならば、Lynxで十分に確認することができる。当時、非力なマシン・ネットワーク環境で、このようにしてWebサイト閲覧していたのである。さらに、時代が経過すると、LynxはWebのアクセシビリティのチェックにも使われるようになった。具体的には、alt属性があれば、画像が表示されていなくても、画像についての情報が得られる。これは、携帯端末などで通信量を抑制しつつ画像情報を伝えたい、さらには視覚障害者にも画像情報を伝達することが可能になる。Lynxは、まさにそのチェックを行うには、最適なブラウザといえる。他にも、もしマウスが使えない場合にどうなるか? JavaScriptやFlashなどが使えない場合にはどうなるか?といったWebページの確認も可能である。

そして、文書構造のチェックである。最近ではCSSを使い、文書構造と装飾要素に分離するようになっている。実際に、CSSを無効にして、マイナビニュースのトップページを表示してみた。

図17 CSSを無効にしてWebページを表示

図14に近い感じで表示される。一説には、この状態でも閲覧に支障がないようになっていれば、よりわかりやすいページになるといわれる。つまり、Lynxでもアクセスしやすいページは、一般的なグラフィカルブラウザでも見やすいということだ。そのチェックにも使える。とはいえ、現時点で積極的に使う理由は乏しいのも事実だろう。

今のPCの多くは、リソース的にLynxを使わなければいけないような貧弱なものではない。ネットワーク回線などにしても、同じことがいえる。とはいえ、今のブラウザとはまったく逆の発想を持ったブラウザである。興味を持ったのであれば、試してみるのもおもしろい。インターネットの黎明期、Lynxが必要であった環境を彷彿とさせてくれるだろう。ノスタルジーがノスタルジーである限り、どこにも迷惑はかけない(と思う)。