住友化学は2月14日、同社が開発した材料を使用して、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(University of California, Los Angeles:UCLA)のYang Yang教授が作製した有機薄膜太陽電池の変換効率が、米国の国立再生可能エネルギー研究所(The National Renewable Energy Laboratory:NREL)より10.6%と認定されたことを発表した。

今回作製された有機薄膜太陽電池は「タンデムセル構造」を採用したものとなっている。同構造は吸収波長範囲が異なる2種類の光電変換層を組み合わせることで、単セル構造比で、高い変換効率を得ることが可能だが、吸収波長の異なる材料の組み合わせや中間層の材料によって、性能が大きく異なってしまうという課題があった。今回の試作太陽電池で実現された変換効率10.6%は、UCLAの短波長吸収型材料と電気的損失を最小化する中間層材料、および住友化学の高効率の長波長吸収型材料の組み合わせにより達成されたもので、有機薄膜太陽電池の変換効率としては世界トップクラスの変換効率となる。

住友化学では、現在事業化に向けて注力しているディスプレイ・照明用途の高分子有機ELに関連する技術を応用し、有機薄膜太陽電池の開発を進めており、こうしたディスプレイや照明用途で培った高分子材料の設計・合成技術、および高分子有機EL材料の生産設備は将来、有機薄膜太陽電池の材料を量産する際の活用が見込まれているという。

また、今後もUCLAとの共同研究などを進めていくことで、材料の性能向上に向けた開発の強化をはかることで、まずは携帯電話やノートパソコンなどの携帯機器向けの充電器や、室内の壁や透明な窓ガラスとの一体型製品などの用途をターゲットとし、有機薄膜太陽電池の変換効率を実用化レベルへ早期に引き上げることを目指すほか、将来的には変換効率や耐久性の向上により、一般家庭の屋根置き用や産業用発電の用途での採用も目指すとしている。

単セルの構造(左)とタンデムセルの構造(右)