Analog Devices(ADI)の日本法人であるアナログ・デバイセズは2月3日、都内で2012年度の事業方針説明会を開催し、全世界および日本での自社のビジネスの概況と今後の注力事業などを語った。

アナログ・デバイセズの代表取締役社長兼会長を務める馬渡修氏は、「ビジョンは名実ともにNo1の高性能アナログ信号処理プロバイダとなること」とし、長期的な目標として2011~2016年度の年平均成長率10%以上の実現、および日本法人として現在13%となっている全社売上比率を20%まで拡大することを目指すとした。

同社の基本戦略は、「コンバータ」、「DSP」、「アンプ」、「パワーマネジメント」、「MEMS/センサ」、「RF」の6つの基礎技術からなるコア技術と、「産業・計測機器」、「ヘルスケア」、「通信インフラ」、「オートモーティブ」、「コンシューマ」の5つの注力マーケットセグメントをマトリクス構造として、対象市場に対応する技術をソリューション化して提供していくというもの。こうしたフォーカスマーケットに即した技術を製品に搭載していくという流れ自体は従来から大きな変更はないが、時代に応じて注力するマーケットセグメントに変更がなされている。

6つのコア技術と5つのマーケットセグメントをマトリクス構造とし、適材適所な技術をソリューションとして提供していくのが同社の戦略。こうしたマトリクス構造のビジネス戦略そのものは以前から大きな変更はないが、ターゲットとするマーケットなどは時代によって変更がなされている

「例えば製品供給1つとってもコンシューマでは1~3年程度だが、自動車関連などは10年間は供給が必要となるなど、まったくタイムスケールの異なるカスタマをサポートしていく必要があり、社内とファウンドリの使い分けなどを行うことで、スピードと品質、性能要求などそれぞれの分野の細かなニーズに対応を図っている」(同氏)とする。

オートモーティブなどのライフサイクルが長い分野とコンシューマアプリケーションなどのライフサイクルが短い分野の両方に製品を供給するための柔軟なサプライチェーンを構築することで、需給バランスやカスタマのニーズへの対応を進めている

日本国内市場も上記5つのマーケットを狙っているが、例えば産業機器ではFA分野を狙っているという。特にプロセスコントロールやロボット関連に注力していく方針としている。また、エネルギー関連やセキュリティ関連なども日本が技術的に先端を行く分野で、特にエネルギー関連はスマートメータや蓄電池などにフォーカスしていくとする。スマートグリッドもデバイスレベルでは幅広い分野に分けられるが、中でもスマートメータと通信網に注力していくとする。

ヘルスケア市場は、高齢化が進んでおり、そうした意味では新しいヘルスケア分野(遠隔医療やエージングなど)に高い興味が企業、エンドユーザーともに持っており、コンシューマから治療/診断といった院内分野まで幅広く成長が期待できることから、「日本市場の同分野の平均成長率は過去3年で21%だが、今後5年でこれの倍以上の成長を期待している。これは病院内だけでなく、コンシューマ向けにもさまざまな機器が登場し、病院と家庭が結びついていく流れとなる可能性があり、ある種の有望分野」(同)と期待を覗かせる。

通信インフラ市場は、スマートフォンの普及などで無線ネットワークが拡大しているが、そのバックボーンは有線であり、有線/無線ともに今後も成長するほか、電子化が進むオートモーティブ関連はエコロジーの考えと安全性向上が求められるようになっており、「日本での売り上げの中で一番の成長株」(同)と評するほど。今後の電子化の進展としては、高級車クラスに搭載されている運転支援システムやバッテリの長寿命化、ハイブリッド関連技術、インフォテインメントなどでの伸びが期待できるとした。

そして最後の市場となるコンシューマでは、従来のデジタルリビングのような考え方からヒューマンインタフェースなどを狙った方向に戦略を転換を図っているという。

このほかコアマーケットと呼ぶ汎用品を活用するカスタマが多いマーケットがあり、こうしたカスタマ向けの情報の提供力強化をWebサイトを経由してもらうなどで進めており、今後もそうした取り組みを進めていくとした。