三井住友建設は1月11日、福島県除染技術実証事業の実地試験にて、同社独自の放射能汚染土除染システムを用いて除染処理後の放射能濃度を1/25に、処分が必要な放射能汚染土壌量を1/5にそれぞれ低減させることに成功したと発表した。同技術は、福島県除染技術実証事業の公募対象技術として応募して選定され、伊達市小国ふれあいセンターにおいて実地試験を実施し(画像1)、今回の成果となった。

画像1。福島県除染技術実証事業における実証プラント

この放射能汚染土除染システムは同社が金沢大学との共同で2010年5月から研究を進めてきたもの。汚染土壌の前処理工程、特殊洗浄機を用いた研磨工程、除染処理土と放射性セシウムを含む濁水に分離する洗浄・分離工程、凝集剤とセシウム吸着剤を用いた濁水の濃縮・脱水工程などにより、除染処理土と放射性セシウム濃縮土に分離する可搬式プラントを用いた独自開発の除染システムだ。

これまで放射能汚染土を用いた室内試験および現地での実証試験を繰り返し実施して、除染減容化技術の実用化を進めてきたが、今回、福島県除染技術実証事業に選定されたことから、2010年12月1日より伊達市小国ふれあいセンター内の運動場約2500平方メートルの除染・実地試験を行った。

当地では、地上1mで平均2.0マイクロシーベルト/時(μSv/h)の放射能が計測されており、地表部汚染土壌の濃度は約2万ベクレル/キログラム(Bq/kg)となっている。除染処理の結果、1/25の濃度800ベクレル/キログラム(Bq/kg)にまで除染することに成功した(計測値はいずれも同社の分析結果による)。また、対象となる土壌についても、冒頭で述べた通りに処分が必要な放射能汚染土壌の量を1/5に減らすことができたというわけだ。

このシステムの工程の詳細は、以下の通り。放射能汚染土壌に対して、(1)洗浄剤により放射性セシウムの剥離効果を高める前処理を行い、(2)独自に開発した特殊洗浄機などによる研磨工程において土粒子から放射性セシウムを剥離させ、(3)洗浄工程において除染処理土と放射性セシウムを含む濁水に分離し、(4)濁水を凝集剤とセシウム吸着剤で処理し沈殿物を濃縮・脱水し、再利用可能な除染処理土と放射性セシウム濃縮土に分離するというものだ(画像2)。

画像2。放射能汚染土除染システムの処理のイメージ

大型機械や強い酸などを使用せずに、コンパクトな処理装置を用いた方法により、現地での汚染土の除染が可能な点もポイントとなっている。

そのほかにも特徴として、セシウム吸着剤は金沢大学において安全性が確認された薬剤を使用していること、強い酸などを使用しないので処理作業や処理後の土壌への悪影響を及ぼさないこと、小規模なモバイル型のプラントを使うので学校や公園などの除染に適していること、実験室などで使用する精度の高い放射線測定方法により環境中の放射能の影響を遮断した測定が可能なことから再利用土の安全性が確保されることなどがある。

今後は、除染処理方法の自動化を含むさらなる効率化を推進するとともに、この放射能汚染土除染システムの積極的な展開を通じ、被災地の1日も早い復旧を支援していくと同社ではコメントしている。