SAS Institute Japanとクロス・マーケティングは12月14日、ビジネスパーソンを対象に実施した共同調査の結果に基づき、「2011年 分析力に優れた企業ベスト10」を発表した。同調査は昨年に続き2回目となり、ビジネスパーソン1,000名を対象にインターネットによるアンケート形式で実施された。

SAS Institute Japan マーケティング本部長 北川裕康氏

SAS Institute Japan マーケティング本部長を務める北川裕康氏は、「これまでBIでは過去のデータをもとに『何が起こったのか』を明らかにしていた。しかし、企業競争に勝つためには、『次に何が起きるのか』『予測された事象が起きた時の最適なアクションは何か』なと、予測的な分析力が不可欠」と、企業における分析力の重要性について説明した。

昨今、IT業界では超大量のデータを「ビッグデータ」と呼び、これをどのように扱うかということが注目を集めている。同氏は、このビッグデータが分析の必要性を高める要因の1つと語った。「ビッグデータを活用するには、分析して意思につなげる必要がある。こうしたビッグデータの分析を『ビッグアナリティクス』として提唱していきたい」

ビッグデータに加えて、企業における分析力の必要性を高める要素としては、「ソーシャルメディア」が挙げられた。その理由は「消費者の商品購入のプロセスにおいて、ソーシャルメディアは大きな影響力を持っていること」と「企業や商品のブランドに対する感情がデジタルデータの中にあること」だという。

同氏は、SASが考える分析力に優れる企業の要素として、「企業文化として分析が根付く」「組織内に高い分析能力を持つ」「適切なシステム/ツールの導入」「データの利用可能性」を挙げ、これら4つの要素がすべて組み合わさっている必要があると訴えた。

SASが考える分析力に優れる企業の4つの要素

クロス・マーケティング マーケティング&リサーチ本部 リサーチプランニング部 シニアリサーチャー 雪嶋貴大氏

クロス・マーケティング マーケティング&リサーチ本部 リサーチプランニング部 シニアリサーチャー 雪嶋貴大氏からは、ランキングの説明がなされた。今年の「分析力に優れたイメージをもつ国内企業ベスト10」は、前年第4位だった「ソフトバンク」がトップなり、これに「トヨタ自動車」(前年首位)、「ファーストリテイリング」(前年第5位)と続く。

同氏は昨年の結果と比べ、「一般消費者との接点が多く、より身近な商品を提供している企業がランクアップする傾向がある。その反面、家電や電子機器などの製造業が落ち込みを見せた。消費者の生活に身近な企業が想起されやすい傾向は昨年と同様だったが、今年は、革新的で最先端のヒット商品・サービスを生み出している企業がより高く評価された」と説明した。

上位3社を見ると、ソフトバンクとファーストリテイリングの商品やサービスを想起する理由のトップに「ヒットする商品やサービスを生み出しているから」がきており、第2位と第3位の理由も「最先端の商品やサービスを作り出しているから」「革新的な商品やサービスを生み出しているから」となっている。ソフトバンクはAppleの「iPhone」、ファーストリテイリングは「ヒートテック」といったように、市場で圧倒的な強さを持つ商品を持っている。

加えて、ソフトバンクの代表取締役社長は孫正義氏、トヨタ自動車の代表取締役社長は豊田章男氏、ファーストリテイリングの代表取締役会長兼社長は柳井正氏と、三者は「社長」に関する調査の上位の常連だが、同氏によると、商品やサービスの想起理由として「社長」も少なからず挙がっているという。

「分析力に優れた企業ベスト10」の上位企業の比較

同調査では、回答者に対し、自社における分析の実態についても聞いている。分析の実施状況を聞いた質問に対し、約8割は実施していると回答したが、そのうち「あまり行われていない」が半数以上占める結果となった。活用についても、9割以上が活用されていると答えたが、「あまり活用されていない」が過半数に達している。

また、分析に取り組むうえでの懸念事項としては、「分析を活用するための組織体制が不備である」「分析手法に精通しているスタッフの不足」「分析結果をどう活かすかのノウハウがない」「分析を実施するための人員リソースが不足している」が上位に挙がっており、分析に関わる組織やリソースの不足を示唆する意見が目立っている。

こうした結果を踏まえ、同氏は「企業が分析力を高めてビジネスに活用していくには、分析に関する仕組みよりも先に組織体制を整備する必要がある。これを実現するには、現場の社員だけでなく、経営層の意識改革も不可欠」と説明した。