オートデスクは、3DCGユーザのグローバルコミュニケーションイベントとして、ラフォーレミュージアム六本木(東京・港区)にてイベント「Autodesk 3December 2011」を開催。そのプラグラムのひとつとして、オリジナル3DCGアニメーション映画『friends もののけ島のナキ』で監督を務めた映像制作会社白組の八木竜一氏と、同じく白組のCGスーパーバイザーである鈴木健之氏を迎え、同映画の製作過程を紹介するメイキングセッション「friends もののけ島のナキ ~新しい表現をめざして~」が行われた。

会場では大型スクリーンにツールを操作する画面を見せるなどして、かなり丁寧に制作過程が解説された

同映画は、『ALWAYS 三丁目の夕日』などのヒット作を送り出した山崎貴監督が、20年来の盟友という八木氏とともに、実写映画のノウハウと最新のCG技術を融合させた全く新しい映像作品。ストーリーは童話『泣いた赤おに』がベースとなっており、山崎監督が自らアレンジしている。

目指したのは低予算で海外のCGアニメに近づくこと

セッション冒頭で八木氏は、今回の作品制作で目指したのは、日本の限られた映画製作予算で海外のCGアニメのクオリティに近づけることと、90分をきっちりと制作することだったと語った。そして、コストを抑える工夫や試行錯誤を行いながら、どのように作品を制作していったのかを解説してくれた。

このプロジェクトは最初から映画化が決まっていた訳ではなく、制作がスタートした2006年9月当時は、4人ほどで行ってた部活動のような規模だった。2008年中盤に映画配給会社等へプレゼンテーションを行って映画化が決定し、2009年からは約15人に、2010年と2011年は約40人というように規模を拡大していったのだ。このように、スタッフ数を徐々に増やしていったのも、できるだけお金を掛けずに制作するためだったという。

監督の八木竜一氏

CGスーパーバイザーの鈴木健之氏

ローコストとハイクオリティを両立させた数々の工夫を披露

同映画では、ミニチュアで作成した家や村などをデジタルカメラで撮影して画像データとし、CGで補完する形で背景を作成。キャラクターは完全に3DCGだが、動きを与える作業はモーションキャプチャーとキーフレームアニメーションの両方を使ったり、表情などはモーフとボーンの併用で表現している。

今回一番難したった課題のひとつとして、ミニチュア合成でリアリティーを出すと同時に、アニメ的な演出をどのように組み込むかといったバランスに気を使ったという。リアリティーに寄りすぎると真面目な絵になってしまうし、アニメに寄りすぎると存在感が失われてしまう。リアリティーを持たせつつ、シリアスな演技とギャグの演技もこなせるアニメキャラクターを目指したとのこと。

ミニチュア撮影現場

背景は、すべてをミニチュアで作成するのではなく、主要な舞台セットを作成した後に、その継ぎ目や足りない部分をCGで補完。例えば、木の上に作られた主役キャラクターの家の外観は、家を支える木と母屋をミニチュアで作成し、周囲の小屋や木の枝葉などをCGで付け足している。

キャラクターは、すべてをゼロから作成するのではなく、流用できる部分は始めから使い回すことを前提に作成された。特に村人に関しては、ひな形となる3人分のキャラクターを変形して20人を超える人数を揃えたそうだ。映像を見る限り、同じひな形から作成されたとは思えないほど個性豊かな村人達ができ上がっている。

キャラクターの動きも同様で、何度も繰り返す作業は、できる限りスクリプトを使ってツール化し、スタッフ全員が使用できるようにしている。手動でキャラクターを動かすと間違えやすく、修正したつもりでも再修正が必要となる場合がある。しかし、スクリプトを使うと間違えが少なくなり、間違った場合もスクリプトの更新履歴を見ることで原因を特定しやすいそうだ。

実際にキャタクターを動かすデモも行われた

ちなみに、レンダリングはできる限り帰り際に実行させることで、徹夜作業を行わないようにした、というエピソードも披露された。ただし、完成間近の数日は泊まり込む日もあったとのこと。

このほかにも多くの苦労話や、コストを抑えてクオリティを上げるために試行錯誤した数々の制作秘話が紹介され、3DCGアニメを手掛けるクリエイターはもとより、アニメファンにも興味深い話が数多く聞けたセッションだった。