SC11はスパコン関係で最大の学会であり、100件近い論文発表を始めとして、数多くのワークショップやチュートリアルが開催される。しかし、それらと並んで重要なのがExhibit(展示)である。

今年はWashington State Convention Centerの4階と6階(4階の天井が高いので5階は無い)の2フロアを使い、合計265,630平方フィート(約24,700平方メートル)の面積の展示場に産業界から201社、研究所や大学などから135団体が展示を行った。その中から、興味深かったものを紹介していこう。

Washington State Convention Centerの入り口

理研AICS

展示の中でも、一番、意気の上がるのがTop500の1位をキープし、HPC ChallengeのClass-1の4部門でも1位を総舐めにした理化学研究所(理研)の計算科学研究機構(Advanced Institute of Computational Science)の「京」のブースである。目を引く「京」の大きな文字を掲げ、富士通の∞マークのついた計算ノードを1筐体展示していた。そして、ブースの前に掲示板を出して、Top500の1位の賞状を中心に、4隅にHPC Challenge 1位の賞状を貼りだしていた。こういう豪華な展示はなかなか見られない。

なお、写真を撮ったのがGordon Bellの発表前であったので、Peak Performance Awardは貼られていない。

理研のAICSのブース風景

Top500を中心に計5枚の1位賞状を 掲示

東工大

2011年11月版のTop500で5位となったスパコンであるTSUBAME 2.0を持ち、今回、Gordon Bell Special Awardに輝いた東京工業大学(東工大)のブースでは、GPUリッチなコンピューティングの講演などが行われており、多くの聴衆が集まっていた。

TSUBAMEの生みの親である松岡教授は、東工大のブースだけでなく、NVIDIAのブースにも引っ張り出されていたし、このバッジの写真に見られるように、Steering Committee、Executive Committee、発表者など色々な役割を兼任しているので、連日、夜遅くまで仕事があり、大変とのことであった。

東工大ブースで講演する松岡教授

松岡教授のバッジにはリボンが一杯

富士通

「京」コンピュータを理研と共同開発した富士通は、「京」で開発した技術を利用した商用スパコン「FX10」を前面に押し出した展示を行っていた。「京」が赤一色の前面パネルであるのに対して、FX10は赤と銀のツートンカラーで、赤の部分も「京」と比べると、多少明るめの色となっている。

富士通ブースはFX10を前面に展示

FX10ではCPUがSPARC64 IXfxとなり、「京」のCPUのSPARC64 VIIIfxの2倍の16コアとなった。消費電力の制約からか、クロックは2GHzから1.848GHzと若干低くなったが、それでもCPUチップあたりのピーク演算性能は128GFlopsから236.5GFlopsに向上している。理論的には最大1024筐体のシステムが作れ、その場合のピーク演算性能は「京」の約2倍の23PFlopsとなる。

FX10の裏側。本体部分は「京」と同じに見えるが、筐体の裏蓋が水冷ドアになっている点が異なる

また、「京」ではCPUとICCと呼ぶインタコネクト用LSIの熱は水冷であるが、メモリDIMMや電源の熱は空冷で計算機ルームの室内に放出されていた。これに対して、FX10では水冷バックドアがオプションとして付くようになり、これでDIMMや電源などの発熱を吸収することにより、計算機ルームの空調への熱負荷が無くなるという。

16コアのFX10のCPUウェハ

なお、FX10は、東京大学情報基盤センターから1.13PFlopsのシステムを既に受注しており、2012年4月に稼働の予定であると発表されている。

日立

日立はハイエンドHPCサーバであるSR16000のシステムボードを展示していた。このシステムボードはIBMのPOWER 775と同じものである。この、たたみ一畳分という巨大なプリント基板は、IBMのPOWER 775のものも日立化成の製造と言われている。

日立のブースの風景

また、2Uサイズの筐体に16コアOpteron(Interlagos)を2チップ搭載するHA8000-tc/HT225というサーバを展示していた。

IBMのPOWER775と同じ日立のSR16000のシステムボード

サーモサイフォンで放熱する日立のHPC用サーバのHA8000-tc/HT225

NEC

NECは、11月7日に発表した次世代ベクトル機SX-X(ローマ数字の10)のCPUのプロトタイプチップを展示していた。性能は256GFlops、メモリバンド幅は256GFlopsと書かれているが、SX-Xは2013年~2014年に製品化予定とのことであり、このプロトタイプチップがどの程度の完成度であるかは不明である。

NECブースの風景

正面に次世代SX-XのCPUプロトタイプを展示

また、クラスタ型のHPCサーバであるLXシリーズを展示していたが、こちらはIntelのMICパートナであることをアピールしており、Intelから製品が出てくれば搭載するとみられる。

クラスタ型HPCサーバのLXシリーズはIntelのMICのパートナをアピール