11月14日、Intelは「Sandy Bridge-E」というコード名で知られてきたIntel Core i7-3000シリーズと、これに組み合わせるIntel X79 Expressチップセットを正式に発表した。今回は正式発表に先立って製品を試用する機会に恵まれたので、特集レポートをお届けしたい(Photo01)。

Photo01:

製品スペック

まず今回発表になった製品をまとめたのがこちら(Photo02)である。本日発売なのは「Core i7-3960X」と「Core i7-3930K」の2品種で、Core i7-3820は2012年第1四半期の出荷となっている。とりあえずは6コア製品2品種をリリースし、4コア製品は後送りという形だ。いずれもパッケージはLGA2011で、4chのDDR3メモリをサポートする。ちなみにPhoto02は米国での価格であるが、日本における価格は、

・Core i7-3960X : \76,860
・Core i7-3930K : \43,090
(いずれも1000個あたりでの価格:店頭価格はまた別である)

との事。最近の円高傾向を反映した価格になっており、(絶対金額はともかくとして)割安感が大幅に増した感はある。ダイサイズは434.72平方mm(20.8mm×20.9mm)、総トランジスタ数は22億7千万個という、デスクトップ向けとは思えない(一昔前のItaniumに匹敵する)巨大なダイが7万円とか4万円で買えるというのは、それだけで買う人間が居そうな代物だ。

Photo02: 下半分は現在出荷中のLGA1155ベースのCore i7シリーズ。動作周波数は似たところにあるが、キャッシュやメモリチャネル数が大きく異なる。勿論パッケージも異なる。

内部構成はこちら(Photo03)。元々は8コアのCPUのうち2コアを潰して出荷する形になっており、これは来年出荷されるCore i7-3820でも同じになるという。各コアに繋がったL3同士は双方向のリングバスで繋がっている、という構造はSandy Bridgeに共通のものだ。

Photo03: 共有L3キャッシュもまた、コア毎に2.5MBづつ、8コアでトータル20MBという形になっており、Core i7-3960Xだとこのうち2つを潰しているので2.5×6=15MB。Core i7-3930Kは、更に各L3を2MBに制限しており、2×6=12MBという計算になる。

ちなみに性能としては、IntelのCore i7-990X Extreme Editionと比較しても(Photo04)、Core i7-2600Kと比較しても(Photo05)大きく向上しているとの説明であった。

Photo04: 対Core i7-990X比。メモリパフォーマンスはともかく、エンコード性能とか物理演算性能がここまで大きく向上するかはちょっと確認の必要がある。

Photo05: こちらも同じく。もっともUsageがちょっと違う気はするのだが。

ちなみに今回から、パッケージはスリムになった(Photo06)。これは標準のクーラーを同梱しなくなったことが一番大きい。その代わりとして、遂に純正で液冷キットが登場した(Photo07~09)ほか、複数のベンダーから水冷キットが用意される(Photo10)。ちなみに液冷が必要というわけではなく、従来の空冷ファンも用意される(Photo11)。

Photo06: もっともCPUだけにしては、サイズは相変わらず大きい。やはりハイエンドなので、小さい箱なのは高級感が無いということなのかもしれないが。

Photo07: リザーバタンクはなく、ヒートシンク部にウォーターポンプも内蔵される。複数のソケットに対応したリテンションも同梱される。

Photo08: ホース類は完全嵌め殺しになっており、外部からメンテナンスする必要がない(というかできない)つくりとなっている。ラジエータ部は実測値で153mm(幅)×120mm(高)×65mm(奥行)。12cmファンの取り付け穴に取り付けられるようになっている。

Photo09: これが水冷キットの外箱。今回は評価用の白箱で届いた。

Photo10: よくみるとCorsair/CoolerMaster/Antecしかベンダーがなかったりする。日本でもなじみのベンダーばかりなので、ここにある全モデルが投入されるかどうかはともかく、いくつかは直ぐに入手可能になりそうだ。

Photo11: Intelによれば、定格動作をするかぎり液冷キットもこの空冷キットも差がないとか。なので差は、Turboを多用するとかオーバークロック動作をさせるといったケースで出る事になるだろう。

さて、このLGA2011に対応するのが、新しく登場するIntel X79 Expressである(Photo12)。実は今回発表されたX79は、今年のCOMPUTEXなどで展示されたX79と異なる構成である。実はCOMPUTEXの時点で展示されたX79は、Xeon向けの「Patsburg」(開発コード名)のうち、ハイエンドに属するPatsburg-Dをベースとしたものである。こちらは図1の様な構成となっている。CPUとの接続にはDMI 2.0とは別にPCIe Gen3 x4も利用され、その結果CPUから出るPCIeは36レーンとなっている。またHDDとしては共通構成のSATA 3G×2+SATA 6G×4に加え、SATA/SAS両対応の6Gポートを8つ持ち、合計で14レーンのSATAが利用可能というお化けチップセットだった。ところが流石にこれはコンシューマ向けにはスペック過剰と判断されたのか、最終的には図2の様にPatsburgシリーズのローエンドであるPatsburg-Aに切り替わった。こちらはSASのポートは無く、またCPUとの接続もDMI 2.0のみとなっている。このためCPUからは合計40レーンのPCIeがフルに使えるようになっている。

Photo12: 最終的な構成。ちなみにチップセットがサーバー向けなのでRSTは標準では入らないが、これはオプション扱いで使うことは可能という話であった。

図1:

図2:

ところでこのCPUからでるPCIe、気になるのはPCIe Gen3の対応がどうなっているのだが、Intelは非常に微妙な表現をしている(Photo13)。「一体このbelieveって何?」と尋ねたところ、今はPCIe Gen3対応のグラフィックカードが無いので、本当に動くかどうか検証できないという返事だった。一応PCIeの相互運用性テストの場にX79を持ち込んで、非グラフィックデバイス(RAIDとかPCIe Switchなど)でのGen3動作は確認しているので、理論上は動くはずなのだけど、最終的にはグラフィックカードを挿してみないと動くとは言い切れない、というあたりがこの微妙な表現に繋がったとの事である。

Photo13: 下段に"Intel believes that some PCIe devices may able to archieve the 8GT/s PCIe transfer rate on the X79 Express Chipset based platform"とあるあたりが笑える。