原発事故の影響で節電を強いられた今年の夏。それが終わったと思ったら、今度は冬の電力不足が心配されています。そんな中、注目されているのが家庭用の太陽光発電です。地球環境にやさしく、自分で電気を作れる安心感があるだけでなく、電気料金が下がっておサイフにもやさしいといわれています。では、その効果はどのくらいなのでしょうか。今回は太陽光発電を導入した場合の家計への影響を見てみましょう。

太陽光発電導入の家計へのメリットは?

家庭用の太陽光発電システムは、屋根の上に太陽光パネルを設置して、昼はそれで発電した電気を使い、夜は従来どおり電力会社が供給する電気を使うという仕組みです。昼間の電気料金がかからなくなるので光熱費が削減できるうえ、自宅で使う量を上回る発電して余った電気は、電力会社に買いとってもらえます。

太陽光パネルの設置で電気料金がどのくらい減り、売電収入がいくらくらいになるかについて、資源エネルギー庁は次のようにシミュレーションしています。

4kWhの太陽光発電パネルを設置した標準的な家庭の場合

設置前 設置後
電気の使用量 300kWh 157kWh
電気料金 7,000円 3,660円
売電収入 -- 9,000円

(→差し引き月1万2340円のプラス、年間で約14万8000円)

(※資源エネルギー庁による試算。売電単価は42円/kWh、自家使用率40%、1カ月当たりの電気使用量が300kWhで7000円とし、太陽光発電導入後も電気使用量は300kWhで変わらないものとして試算)

このシミュレーションでは自家使用率を40%としていますが、太陽光発電システム見積工場代表の菱田剛志さんは、「共働きなどで昼間の電気使用量が少ない家庭もあるし、太陽光発電導入で家族の節電意識が高まることもあり、実際には自家使用率が25%くらいになるケースも多い」と話します。

そうすると、シミュレーションより電気料金は少なく、売電収入は多くなり、導入メリットが高まります。

さらに、太陽光発電に適した電気料金プランに変えれば電気料金をより下げられることがあり、太陽光パネル設置とともにオール電化を導入すればガス代がゼロになるので、よりいっそうの光熱費削減につながります。

導入のコストはどのくらい?

一方で気になるのが、太陽光発電システムの導入コストです。

菱田さんによると、初期費用は取り付け工事を含めて1kWhあたり50~60万円。家庭で一般的な4kWhのシステムだと、200~250万円くらいになります。

見逃せないのは、太陽光発電導入に対する補助金です。

国の2011年度の補助金は、1kWh当たり4万8,000円。4kWhのシステムなら19万2,000円の補助が受けられます。申し込みは12月22日までとなっています。

地方自治体の中にも補助金制度を設けているところがあります。

例えば東京都の場合、2011年度は、1kWhあたり10万円を補助します(ただし、国や市区町村等の補助金と併せて利用する場合は、その分が差し引かれます)。

区や市が独自の補助金を設けているところもあり、墨田区は1kWhあたり10万円、豊島区は4万円、立川市は5万円などとなっています。

(※ 補助金を受けるためには、導入する太陽光発電システムが一定の条件を満たす必要があります)

太陽光発電システムの設置費用が240万円、補助金をフルに活用して40万円受けられたとして、上記シミュレーションの金額をトータルすると、

(設置費用:240万円-補助金:40万円)÷14.8万円=13.51

つまり、13年半程度でモトがとれる計算になります。

余剰電力の買い取りや補助金は縮小する可能性も

とはいえ、この計算はあくまでも今現在の条件をもとにしたものです。

2011年度の余剰電力の買い取り価格は、1kWh当たり42円。今年度新規に太陽光発電システムを導入した場合、この金額が10年間適用されますが、10年後にどうなるかはまだ決まっていません。

また、来年度以降に新規に導入した場合の買い取り価格がいくらになるかも、今のところわかりません。

国や自治体の補助金については募集枠があり、その枠が埋まってしまうと、期限前でも申し込みが打ち切られる場合があります。

余剰電力の買い取りや補助金は、太陽光発電の普及を促進するためのものなので、普及が進むにつれて縮小していく可能性があることは知っておいたほうがいいかもしれません。

さらに、住まいの状況によっては、太陽光パネルが設置できなかったり、日照条件などによって発電量が期待どおりでなかったりすることもあります。システム導入に当たっては、複数の業者から見積もりをとって、こうした点までアドバイスしてくれるところを選ぶことが大切です。

個別訪問してくる業者の中には、悪徳なところもあるようなので、くれぐれも注意してください。

執筆者プロフィール : 馬養 雅子(まがい まさこ)

ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、一級ファイナンシャルプランニング技能士。金融商品や資産運用などに関する記事を新聞・雑誌等に多数執筆しているほか、マネーに関する講演や個人向けコンサルティングを行っている。「図解 初めての人の株入門」(西東社)、「キチンとわかる外国為替と外貨取引」(TAC出版)など著書多数。