映画・TV番組をオンラインDVDレンタルとストリーミングサービスで提供している米Netflixが、18日(米国時間)に事業を分割すると発表した。従来型のメディア(DVD)と、新しいコンテンツ配信を1つのサービスに同居させるのが困難であると判断。オンラインDVDレンタル事業を切り離し、Qwiksterという名称で独立させる。過去4年以上にわたって同事業を率いてきたAndy Rendich氏がQwiksterのCEOに就任する。

Netflixは1999年に月定額制のオンラインDVDレンタルを開始した。ユーザーがWeb上でDVDレンタルの希望リストを作成すると、レンタル可能な作品が郵便で送られてくる。同時に借りられる枚数制限の範囲内で何作品でもレンタルでき、別途に郵送料を支払う必要もない。シンプルな仕組みと借りたDVDを返却に行く必要のない手軽さから、短期間でユーザーを増やした。さらに2007年に、ライバルに先駆けてストリーミングサービスの提供に乗り出した。開始当初はストリーミング作品が少なかったものの、1000万人に迫るDVDレンタルサービス契約者の大部分にストリーミングサービスを無料提供したため、TVやBlu-rayプレイヤー、ゲーム機、セットトップボックス(Roku、Apple TV)など様々な種類のネット対応機器のメーカーがNetflixのストリーミングサービスのサポートに乗り出し、ストリーミングも順調に立ち上がった。

しかしながら近年、Netflixは急速な成長に伴うトラブルに直面していた。Netflixのストリーミングに対して、米ISPがインターネット・トラフィックの大きな部分を占有していると批判。ストリーミング利用者の急増でコストが拡大したこともあり、昨年10月にNetflixはストリーミング専用プラン(7.99ドル/月)を用意するなど、サービスプランを改定した。ストリーミングサービスの立ち上げ期間を終了させた形だが、新プランで従来と同じ様にDVDレンタルとストリーミングを利用すると数ドル高くなる。多くのユーザーはこれを値上げと受けとめ、Netflixの一方的なサービス変更および料金変更に対する批判の声が広まり、今年に入ってNetflix離れが進んでいた。

Netflix CEOのReed Hastings氏は事業分割について、オンラインDVDレンタルとストリーミングを1つのサービスとして融和させるのではなく、ストリーミング技術の向上を加速させ、市場の前進を促すためには、2つをそれぞれ独立した事業として運営すべきと判断したと説明している。「2つの事業はコスト構造がまったく異なり、メリットを引き出すにはそれぞれに適した市場戦略が必要である」と同氏。Qwiksterでは、映画・TV番組に加えてゲームのレンタルを開始するという。同氏はまた、過去数ヶ月の混乱について「Netflixが発展するときには、より密なコミュニケーションが必要になるにも関わらず、その重要さを認識していなかった」と語った。