カネカは9月7日、同社が従来から展開している耐熱耐光透明樹脂にさらなる機能を付与した感光性樹脂「ILLUMIKA R」をディスプレイの駆動に用いられる薄膜トランジスタ(TFT)用塗布型有機絶縁膜材料として2011年10月より販売開始を目指すことを発表した。

現在、ディスプレイは基板としてガラスを用い、TFTなどのアクティブ素子を各画素に配置して駆動させるアクティブマトリックス駆動が主流となっているが、薄型化、軽量化の要求に応える為に、プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイの開発が積極的に行われている。

TFTの絶縁膜としては、従来、窒化ケイ素などの無機材料が使用されているが、製造コストや設備投資の低減、省エネといった点から真空装置を使わない塗布型絶縁膜の開発が期待されているほか、フレキシブルディスプレイにおいては、基板として使うプラスチックの選択肢を広げるために、より低温で製膜できる材料が望まれている。

ILLUMIKAは2008年より市場展開を開始した樹脂製品で、その成果を受けたILLUMIKA Rでは薄型化、軽量化、フレキシブル化が求められるディスプレイ市場に向けて、以下の改良などが施されたという。

  1. 塗布プロセスの適用によりプロセス簡略化が可能
  2. 同社保有の材料設計技術をベースに光硬化反応と熱硬化反応を併用することで緻密な架橋構造を実現し低温・短時間(120℃・10分)のプロセスでも高い絶縁信頼性を確保
  3. ユーザーの要望に応じて誘電率や表面疎水性(水接触角70°から110°)のコントロールが可能
  4. フォトリソグラフィ性によりミクロンレベルのパターニングが可能

なお、同社では同樹脂がすでに有機TFT向け絶縁膜用途として複数ユーザーにて評価が行われており、早期の本格販売が見込まれるとしており、今後は、高い絶縁信頼性を活かして酸化物TFT用絶縁膜、タッチパネル用絶縁膜への展開も含めフレキシブルディスプレイを中心に塗布型絶縁膜材料として展開し、5年後に50億円の販売を目指すとしている。