日本全国において、節電はこの夏の最大の課題である。夏本番となるなかで、電力不足はさらに深刻なものとなっており、節電に対する意識はますます高まっている。だが、これはこの夏だけの事情ではないというのが、今や新たな共通認識となりつつある。

脱原発が議論されるなか、原子力発電施設の定期検査後に再稼働できない施設が多いことから、東日本だけでなく、西日本地域でも電力不足が大きな課題となり、これが長期化することは誰の目にも明らかだ。冬場は暖房使用により、電気の消費量が多い時期を迎えるのは周知の通りであり、もはや、今年の夏を乗り切ればいいという状況ではなくなってきた。

一方で、首都圏や東北地区では、大規模停電や計画停電を経験したことで、停電時でも最低限の業務を継続するための仕組みづくり、政府からの15%の節電要請にも耐えうる環境づくりなど、停電対策、節電対策が重要課題となっている。それにあわせて、節電やピークシフト、停電対策を行うための設備投資も重要なテーマになっているのだ。

そうしたなか、ソニーは、業務用一体型リチウムイオン蓄電池「ESSP-2000」を、2011年9月上旬から出荷すると発表した。

業務用一体型リチウムイオン蓄電池「ESSP-2000」

コンセントを抜いても薄型テレビがそのまま稼働している様子

ソニービジネスソリューション 代表取締役 花谷慎二氏

ソニービジネスソリューション 代表取締役 花谷慎二氏は、「日本全国で節電の意識が高まるなか、蓄電池に対しては法人からも強いニーズがある。ソニーが持つ蓄電池の技術をどうやって現場に適した形で届けるかを検討してきた。システムとして提供するもの、また、パッケージとして提供するものとを用意した。今回の製品を切り口に、顧客と話し合いながら、電力の効率運用に関するビジネスの幅を広げていきたい。5月16日付けで、エナジー事業推進室を新設しており、今後この事業を拡大していく」とした。

ソニービジネスソリューション エナジー事業推進室 室長の渡邊圭一氏は、「蓄電池は、社会にも貢献できる重要なソリューションと位置付けている」と前置きし、「この製品には、ソニー製オリビン型リン酸鉄リチウムイオン蓄電モジュールを採用すること、一体型蓄電池と個別ソリューションの双方を提供可能であること、そして長期間にわたって安心して利用してもらえる保守サービスを提供することができる、という3つの強みがある」と語る。

ソニービジネスソリューション エナジー事業推進室 室長 渡邊圭一氏

ソニー製オリビン型リン酸鉄リチウムイオン蓄電モジュールは、23度で1日1回充放電しても10年以上の使用が可能な長寿命であり、鉛電池の5~10倍という充電速度であることから短時間での急速充電も可能。さらに高出力という特徴を持っているという。

ESSP-2000の蓄電容量は2.4kWh。95%の充電まで最短で2時間という急速充電が可能。最大負荷は1000VAとなっており、入力はAC100V、最大1500W。外形寸法はW490×H160×D750mm、重量は約90kg。動作温度は5度~35度となっている。なお、今回の製品で使用している蓄電池は、ソニーエナジーデバイスの栃木事業所で開発したものを使用する。

さらに、用途に合わせてUPSモード、タイマー充放電モード、バックアップモードの3つの運用モードを用意しているのも特徴だ。

UPSモードは、PCやサーバなど、瞬断することで大きな不具合が発生する機器において使用するのに適したモードで、接続されている機器に電力を供給しながら蓄電池に充電する一方、常時インバーター方式により、停電時は無瞬断で継続使用できる。タイマー充放電モードは、充放電時刻をタイマーで設定することが可能になり、夜間に充電し、昼間に放電するといったピークシフトへの対応が可能になる。バックアップモードでは、機器への電力供給と蓄電池の充電を2つの系統で同時に行うもので、最大負荷条件でも確実に充電することが可能だという。

本体前面に設置された監視パネルでは、蓄電池の状態を表示し、モードの切り替えや充放電のタイマー時刻もパネルから簡単に設定できる。さらに、背面にコンセントを6口用意していることから、多くの電気機器に接続することが可能となっている。

蓄電池の状態を表示し、各種設定を行える監視パネル

「オフィス内のPCやサーバ、通信機器のバックアップ電源としてのほか、文教市場では研究室内の設備や非常用放送設備に、さらには銀行のATMや、薬局および飲食店の冷蔵庫用途、自治体の防災無線設備や住民サービス設備への利用を想定している。また、マンションの共用部の非常照明や集合住宅のバックアップ電源にも利用できる。停電によってマンション全体のインターネットが利用できなくなったという例もあり、そうした非常時の活用にも適しているだろう」(渡邊氏)

また、業務用の販売・サポートを活用することで、最大で8年間の保守メニューを用意。契約した企業の専用窓口を設けて、障害発生時には専門の技術スタッフが直接問題解決にあたるヘルプデスクサービスを提供するほか、修理は代替機を持ち込むことで継続的な利用を可能にするオンサイトサポートを実施する。

市場想定価格は200万円、今年度中に国内だけで300セットの販売を計画しているという。

一体型蓄電池と個別ソリューションの双方が提供される