国立天文台は石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡が2011年7月29日夜に子供の彗星を持つ珍しい彗星の撮影に成功したことを発表した。

子供を持っていることが分かった彗星は、周期彗星のファン・ネス彗星(彗星記号:213P、周期6.3年)で、2005年に13等の明るさになるバーストを起こし、発見された彗星。一方の石垣島天文台は、2006年に国立天文台と石垣市が共同して建設した天文台で、むりかぶし望遠鏡は、九州沖縄で最大の口径(105cm)をもつ反射式天体望遠鏡。土日祝日は、一般の天体観望などにも利用されている。

石垣島天文台では、この彗星が2011年9月上旬に、太陽と反対方向の位置にくる「衝」を迎え観測しやすくなることから、同7月中旬から観測を開始していたが、7月29日に花山秀和研究員と福島英雄研究技師が、ダストトレイルと呼ばれる彗星軌道に残された帯状の塵の輝きの中に、子供のように見える新たな彗星を発見したという。 子供の彗星のように見える同彗星は、親の彗星の核から剥がれた小さな氷の破片のようなものではないかと考えられ、石垣島天文台では、引き続き観測を続けるとともに、これまでの観測データも合わせ、この子供彗星が、いつごろ生まれ、親彗星からどれくらいのスピードで離れていったのかなどを解明していきたいとしている。

なお、同彗星の現在の明るさは、親彗星が13等、子供の彗星が約20等で、肉眼では見ることはできない。現在、彗星は地球からの距離約1億9500万kmの火星の外側を楕円軌道で回っており、うお座の方向にある。

ファン・ネス彗星(203P)と子供の彗星。矢印の先に、親の核から剥がれた破片によりできた子供の彗星が写っている。撮影時刻は2011年7月30日2次29分(日本時間)((C)石垣島天文台提供)