アカマイ・テクノロジーズは8月2日、米国本社社長 David Kenny氏の来日に伴う事業説明会を開催。震災時のWebトラフィックを支えた同社のネットワークについて説明した。

米Akamai TechnologiesでPresidentを務めるDavid Kenny氏

Kenny氏はまず、同社が、独自ソフトウェアを搭載したサーバを72カ国650都市に数万台規模で設置し、高速かつセキュアでスケーラビリティの高いネットワークサービスを提供していることを説明。世界で3500社以上の顧客を抱えており、Web上のトラフィックの15~30%がアカマイのネットワークを介しているとした。

3500社のうち、日本企業の割合は約10%。Yahoo! JAPANやUstream、ニコニコ動画、Twitter、Facebookなど、国内でも広く利用されているサービスの多くはアカマイのネットワークを利用しており、日本の高速なインターネット環境を影ながら支えているという。

その後、Kenny氏は、震災時に発生した変則的なWebトラフィックについて言及。震災直後は、インターネット利用者が減り、一時的にトラフィックが激減したものの、その後、各地のユーザーが情報を求めてWebにアクセスしてトラフィックが急増。さらに、ニコニコ動画やUstreamで民放各社のTV番組が生配信されたため、ライブストリーミングの割合が急激に増えた様子を紹介した。

Akamaiネットワークにおける震災前後のトラフィック。左上のグラフが全体のトラフィック。地震直後、瞬間的にトラフィックが激減していることがわかる(赤丸部分)。右下のグラフがライブストリーミングのトラフィック。3月11日から急増している。

氏は、こうした状況の中、アカマイが品質を劣化させることなく各サービスのトラフィックを処理し続けたことを強調したうえで、「特別な対応は一切必要なかった」と説明。その理由として、日本には何千台というサーバが設置されており、一部が稼動しなくなったとしても他のサーバに処理を委譲できるうえ、仮に国内のリソースが足らなくなったとしても近隣諸国にあるアカマイのサーバを使える環境が整っていることを挙げた。

また、Kenny氏は、震災直後、アクセスが集中してWebサイトがダウンしかけていた福島県を無償でサポートしたことも紹介。アカマイ側から福島県に電話を入れてその場で合意に至り、翌日にはアカマイのサーバでWebサイトが複製され、大量のトラフィックを賄える状況ができあがっていたという。また、作業のほとんどはアカマイ側で行い、福島県は複製するコンテンツを選ぶだけだったことも明かされた。

Kenny氏は、こうした一連の対応を振り返り、「災害があったときには特に信頼できる通信手段が必要。その一部を担えたことを誇りに思う」とし、「今回、問題なくトラフィックを処理できたことは大きい。将来にわたっても重要な役割を果たし続けられるだろう」とコメントした。