民間の宇宙ベンチャーでいま最も勢いに乗るのが米SpaceX(Space Exploration Technologies)である。IT長者のイーロン・マスク氏が創設したことで知られ、「Falcon」ロケットと「Dragon」宇宙船を独自に開発。2010年12月にこの試験打ち上げが実施され、Dragonは地球をほぼ2周して太平洋上に落下、同社は史上初めて、周回軌道からの再突入に成功した民間企業となった。

SpaceXは本来、NASAのTweetupとは全くの無関係であるが、筆者の元に「Tweetup参加者にDragonを見せてやるから7月6日(現地時間)の午後6時半までに来い」というメールが届いたのが5日前。ケネディ宇宙センター(KSC)に到着した足で、そのまま指定された場所である「Air Force Space and Missile History Center」に向かったのは言うまでもない。

このテントの中になんと本物の「Dragon」がっ!

付近にはSpaceXの打ち上げコントロールセンターがあった

Dragonは、国際宇宙ステーション(ISS)に人や物資を運ぶために開発が進められている宇宙船。スペースシャトルが引退する今、ISSに宇宙飛行士を運べる宇宙船はロシアのソユーズだけになってしまうが、Dragonは有人化も最初から視野に入れており、最大7人のクルーが乗り込むことが可能だという。今年第4四半期に2回目のテストフライトを実施する予定で、有人のフライトも3年以内に実現する構え。

正面から撮影したDragon。こちらの面は比較的綺麗だ

しかし反対側はこんな状態。開口部にはパラシュートが格納されていた

こちらは横から。傾いて再突入したらしい様子が分かる

Dragonの下部はヒートシールドに覆われている

この部分はなぜかむき出し状態になっていた

2段階パラシュートが展開する仕組み

有人飛行に向けて必須となる技術がアボート(中止)用のエンジンシステムである。例えば打ち上げの前後でロケット側にトラブルが発生した場合、爆発の危険性があるようなときは速やかに離脱しなければならない。そのため、ソユーズやサターンVなどでは、ロケットの先端に小型のエンジンを搭載したタワーを乗せているのだが、Dragonはこのエンジンをボディに内蔵したのが特徴。

Dragonの側面には合計18基のアボート用エンジンが内蔵されている

説明したのは元宇宙飛行士で開発責任者であるGarret Reisman氏

アボートタワーは宇宙船の上に乗っているため、使用時には宇宙船を引っ張る形になり、ある程度受動的に安定している。側面にアボート用のエンジンを内蔵したDragonでは、飛行を安定するのが難しくなってしまうが、高度なコンピュータ制御によってこれを実現したという。また着陸(着水)時に逆噴射を行って、衝撃を和らげることも考慮されているとか。

今回公開されたDragonは、最初のテスト飛行で打ち上げられて、太平洋上で回収された機体。そのため、再突入時の空力加熱によって炙られた跡が生々しく残っているが、"荷物"として搭載されたチーズは溶けずに無事だった。このDragon宇宙船は、2011年7月10日より一般公開も行われる予定。