宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月22日、これまでの技術実証にて、準天頂衛星初号機「みちびき」の測位信号(L1-C/A、L2C)の品質・信頼性が準天頂衛星システムユーザインタフェース仕様書(IS-QZSS)に適合することを確認したため、同日午前9時よりL1-C/A、L2C測位信号のアラートフラグを解除したことを発表した。

アラートフラグは「みちびき」の測位信号の利用ができない状態(アラート状態)を示すフラグで、アラート状態では一般ユーザは信号を捕捉しても受信機側で「みちびき」の情報を測位計算に利用できなかった。アラートフラグの解除により、「みちびき」対応のGPS受信機では「みちびき」の測位信号を測位計算に利用することが可能になる。

「みちびき」に対する技術実証は複数段階あり、大きなものとしては「精度」「インテグリティ」「アベイラビリティ」の3つ。精度としては、打ち上げ以降、太陽輻射圧などの衛星軌道を変動させる誤差を補正するモデルの改良やモニタ局受信機の観測データからの劣悪データの排除、推定パラメータのチューニング、測位信号間の衛星機上の距離オフセット(TGD)の正確な同定などが行われてきており、その結果、目標仕様値±2.6m以内(95%)が時間率100%で達成されていること、およびGPSと組み合わせた測位精度が水平方向21.9m(95%)の仕様を満足していることを確認、GPS単独測位と比較して、測位精度が向上していることを確認したという。

また、インテグリティについては、航法メッセージの精度モニタ「SIS-URE」、信号品質のモニタ「コードロック」、送信電力のモニタ「受信電力」、航法メッセージフォーマットのモニタ「データフォーマット」の4つの項目をモニタし、各仕様が満たされていることを確認した。

そしてアベイラビリティも軌道メンテナンス(軌道制御)が仕様の平均150日に1回を実証では平均180日に1回(期間も最大2日間のところが36時間以内)、姿勢メンテナンス(姿勢制御)が仕様の平均40日に1回のところ、約3カ月に1回(期間も最大1日間のところ、12時間以内)と、所定の要件を満たしていることを確認したことから、今回の決定に至ったという。

「みちびき」では、これらの信号のほか、L5やL1Cといった測位信号も送信するが、これらの信号についてもIS-QZSSへの適合を確認した後、順次アラートフラグの解除が実施される予定。

なおJAXAは、「みちびき」対応の市販のGPS受信機の開発促進のために「市販GPS受信機QZSS対応支援制度(QZ-support)」などの促進活動を行なっており、今回のアラートフラグの解除により、このような支援を受けた半導体デバイス、測位機器などを用いて、「みちびき」の効果を体験できるようになり、コンシューマ用途としても、早ければ対応機器が年内にも登場する見込みだという。

「みちびき」に対応したGPS受信機など開発状況

トプコンの固定局用GNSS受信機など。右のモデルはファームウェアがすでに対応している。左のモデル2機種は今年度中にファームウェアの対応で「みちびき」からの電波を受信できるようになるという

ソニーの開発した「みちびき」の試験電波受信ソリューション。実際の受信試験などはこれを用いて行われているという