既報のように、WWDC 2011の基調講演においてAppleは「Mac OS X Lion」の7月発売を発表した。最新のDeveloper Previewの配信も開始し、いよいよ完成目前のラストスパートである。

Lionは、AppleがiOSの成功から学んだことを取り入れた「Back to the Mac」なMac OS Xだ。「人間のよきパートナー」を目指して設計された初代iPhoneの登場をきっかけに、わずか数年でiPhoneがスマートフォン市場を席巻し、そしてモバイルアプリ、タブレットという新市場が誕生した。その思想とノウハウを以て、Appleはふたたびパソコンの「革新」を起こそうとしている。

以下、250以上を超える新機能の中から、Lionの特徴をよく現す10機能にスポットライトを当てた基調講演での説明とデモの様子をふり返る。

Worldwide Developer Conference 2011

シニアバイスプレジデントのPhil Schiller氏が最初に取り上げたのは「マルチタッチジェスチャー」だ。MacBookファミリーのトラックパッドやMagic Trackpadを用いて、Snow Leopardでもマルチタッチジェスチャーが可能だが、Lionではマルチタッチジェスチャーが拡張され、さらにジェスチャー操作を前提にしたユーザー体験(UX)やUIの改善も図られている。

例えば、SafariではスワイプがWebページの「前へ戻る/次に進む」に割り当てられている。右にスワイプすると、その動きに合わせて表示中のページが右に動きながら消え、前のページが現れる。まるで本のページをめくるような感覚であり、その効果によってスワイプ操作がさらに自然なものになっている。

デモを担当したバイスプレジデントのCraig Federighi氏。これまでMac OS Xのデモにはデスクトップ機が用いられることが多かったが、この日はMacBook Proを使って、ほとんどがトラックパッドでの操作だった

写真だと判りにくいと思うが、右スワイプに合わせて、ページをめくるようななめらかな動きで表示中のWebページが消え、前のページが現れる

標準アプリケーションを立ち上げると、見た目が簡潔になった印象を受ける。スクロールバーがないのだ。マルチタッチジェスチャーでは、長い文章やWebぺージでも指先だけの操作ですばやく先頭から末尾に移動できるので、スクロールバーを常に表示しておく必要はない (カーソルを右端に近づけると現れる)。この変更により、ウィンドウの左端から右端まで横幅をフルに使ってドキュメントやWebページが表示される。

右端にスクロールバーがなく、SafariではWebページがウィンドウ全体に表示される

右端にカーソルを近づけたり、スクロールを開始すると、スリムなスクロールバーが現れる