シャープは6月8日、同社のグリーンフロント堺において、省エネ家電や太陽光発電、蓄電池などを連係させ、液晶テレビなどでその消費電力を見ることで、節電の実現を目指す「シャープ・エコハウス」の完成披露会を開催した。

シャープは企業ビジョンとして、「エコ・ポジティブ カンパニー」を掲げているが、これはすべてのステークホルダーとともに、事業活動による環境負荷を大幅に上回る環境貢献を果たす企業を意味している。また、2012年の創業100周年に向けた事業ビジョンの1つに「省エネ・創エネ機器を核とした環境・健康事業で世界に貢献する」がある。

「今回のエコハウスはこの省エネ、創エネに当てはまる」(同社常務執行役員 研究開発本部長 兼 知的財産権本部長の水嶋繁光氏)とのことで、コンセプトを「節電を極める家」とし、3.11の東日本大震災以降の電力を取り巻く環境の変化に対し「電力のあり方を考えないといけない時代になり、その1つの解が同エコハウスであり、この実験を進めることで新たな時代の価値を提供することを目指す」とする。

具体的には、各家電のコンセントにZigBeeでデータを飛ばすスマートタップを接続。そのデータをルータなどのホストシステムに蓄積し、Wi-Fi経由でタブレットやインテリジェントパワコンなどへ状況を知らせるという仕組みとなっている。

シャープ 常務執行役員 研究開発本部長 兼 知的財産権本部長の水嶋繁光氏。左手に持っているのがインテリジェントタブレット。右手に持っているのがスマートタップ

ホームインテリジェントタブレットは、同社の既存タブレット製品を改良したものを使用。これは各家電をコントロールするリモコンとして活用できるほか、太陽電池の発電量や蓄電池の蓄電状況、EVの状況なども見ることができるようになっている。「電力の見える化は非常に重要。平成21年度のスマートハウス実証プロジェクトの報告書では電力の見える化で約15%の節電が可能になるとしている」(同)

各家電機器の電力消費状況を"見える化"することで、節電意識を高めることが可能

こうした背景を踏まえて同社では、同エコハウスで進める実証実験を実際のビジネスにフィードバックするタイミングを3段階あると見ている。

まず第1段階がスマートタップやインテリジェントタブレットを活用した"電力の見える化"。「今年度中の早い時期に事業化したい」(同)としており、スマートタップや対応タブレット、ソリューションなどを提供することで、既築の家でも工事なしで"電力の見える化"の実現を目指す。

シャープ・エコハウスにおける「電力の見える化」の鍵を握るインテリジェントタブレット。画面は基本状態の時のもの

無線通信としてZigBeeを採用したスマートタップ

次の第2段階が、電力会社の系統電力のみの電力体系から蓄電池やEVとの電力連係。「蓄電池やEVは、実際にそれを買ってもらえてはじめて実現できるため、少し時間がかかる」とのことで、次年度以降に状況を見ながら事業化を目指すという。

そして最後の第3段階がDC給電まで含めた家丸ごとのトータルソリューションとしての提供。「単純に新築住宅に入れるのは良いが、既築の建物の場合は改修をしないといけないため、時間がかかる。また、DC給電の利用は、できる限り早い時期が良いが、社会的な理解などもあるため、10年くらいのスパンで考える必要はあるだろう。その間に、安全基準の整備やDC給電に対するメリット/デメリットをエコハウスを通じて洗い出していく」とし、かなり長期的な視点での見方を示す。そのため、事業としても、これ自体をそのまま事業化、という方向ではなく、「既存の家電などにこの効果が乗ってくる」とのことで、自社で提供できる家電関連(パワコンやHEMSを含むソリューションとして)以外の給湯器やEVなどのメーカーとも密接に連係して進めていく方向性を示す。

ACをDCに、またDCをACに変換(コンバート)する際には変換ロスが生じる。それをDCで発電したものをDCでダイレクトに給電すれば、ACへの変換はいらなくなる(実際にはDC/DCコンバータのロスが生じる)ため、より電力を効率良く消費することが可能となる

今回の実証実験に導入したインテリジェントパワコンにはDCの供給能力も付与した

なお、同社は地方自治体などが進めるスマートハウスやスマートグリッドの実証実験にも複数参加しているが、こちらとの違いとしては、「そうした幅広い企業や自治体と連係する一方で、要素技術を自社で持っておくことが重要。このエコハウスは、その試験場的な役割を果たす」としており、エコハウスで先進的な技術の課題出しなどを行うことで、その成果を各地域の実証実験にも反映させていくとしている。