月刊誌「PCfan」(毎日コミュニケーションズ)が主催するイベント、「PCfan Cafe」が6月4日に東京・秋葉原のカフェ・ソラーレ リナックスカフェ秋葉原店で開催された。今回で2度目となる同イベントで、各界のゲストが登場してトークが繰り広げられたわけだが、ラストを飾ったインテルの神様、天野伸彦氏から驚きの発表があったのが最大のトピックではなかろうか。その内容は? といったあたりを含めつつイベントをレポートしてみよう。

声優さんのイベントからPCユーザーに役立つ情報まで内容は盛りだくさん

PCfanが主催する秋葉原のイベントは今回で2回目。パソコン誌らしいPC関係のセッションから、人気声優のライブまでと幅広い内容だった。

「ITジャーナリストに聞く 2011年のPC事情」と題して最初のセッションを行ったライターの山田祥平氏

日本ヒューレット・パッカード イメージング・プリンティング事業統括 追越隆則氏は「ENVY100」を紹介。PCやスマホからメールを送るだけでプリント出来る機能を備えるプリンタだ

興味深い内容だったのは日本マイクロソフトの森洋孝氏が行った「暑い夏を乗り切るためのパソコン運用術」と題されたセッションだ。電力不足がクローズアップされている今年、PCの省電力化も重要になってくるが、省電力ネタというと地味になりがち。

日本マイクロソフト エグゼクティブプロダクトマネージャー 森洋孝氏

だが森氏は、たとえば「離席するときにPCをスリープにしたほうがいいか、あるいは電源を落としたほうが消費電力は少なくなるのか?」といった、PCユーザーなら平時から少しは気にしていそうな具体的な省電力対策を実測データを元に解説。PCユーザーにはかなり参考になったのではないかと思う。

PCは起動時の消費電力が大きい。そのため1時間程度の離席ならスリープにしていたほうがトータルの消費電力は小さくなるそうだ

東電管内のPCの台数から、PCユーザーが省電力を心かげれば最大35万kWもの消費電力抑制が可能と森氏。あくまで机上の計算にすぎないとはいえ無視できない数値であることは確かだろう

というような真面目なセッションに加えて、人気声優さんによるライブも行われ多くの参加者を集めていた。

声優・山本彩乃さんが、PCショップ「FreeT」の店員森田氏の協力を得ながらPC組み立てに挑戦。45分で組み立てろというのだが、PCケースにM/Bを組み込んでフロントパネルのLEDコネクタ類を接続してるあたりであえなくタイムアウト。慣れているPCユーザーでも、丁寧に作業すると45分では厳しいかも?

入りきれないほどの人を集めたTVアニメ『まりあ†ほりっく あらいぶ』の人気声優・小林ゆうさんによる「小林ゆうのキャラクターおもいっきり生電話 IN 秋葉原」

イベントのトリを務めたインテル天野氏~これがラストセッションに?

イベントのトリを務めたのは、PCユーザーにはおなじみのインテル天野伸彦氏だ。いつものように絶好調の天野氏のセッションは1時間30分以上に渡った。内容はZ68 ExpressチップセットとインテルSSD 320シリーズの話題が中心だ。

インテル シニアフィールド アプリケーションエンジニア 天野伸彦氏

Z68 Expressチップセットに関してはSSDをHDDのキャッシュとして利用しシステムの高速化を図るSmart Response Technologyを紹介。SSDからHDDへのキャッシュのフラッシュなどが発生することもあるので過度な期待は禁物だが、使い方によっては大きな効果があるということをデモを交えて説明していた。

Smart Response Technologyは定常的な使い方をしている人に向くと天野氏

Sandy Bridgeからサポートされているハードウェアエンコーディングの機能はCPU内蔵グラフィックスがオンになっていないと使えない。しかし、ディスクリートグラフィックスをメインにしていても、CPU切替器を内蔵グラフィックスにつないでおくだけで内蔵グラフィックスのハードウェアビデオエンコードの機能が使えたよ、という小ネタも紹介された

SSDの話題では、とくに寿命に焦点を当てて耐久性の調べ方が紹介されていた。やや手間のかかる方法ではあるが、S.M.A.R.Tで得られるパラメータから寿命を推定する方法が紹介された。インテルのSSDを持っているユーザーなら試せるので、調べてみるのも面白いかもしれない。

S.M.A.R.Tの属性E9(Media Wearout Indicator)はインテルがリリースしているツールSSD Toolboxで確認できる値の一つで、新品の時には100で劣化に応じてカウントダウンされるパラメータ。一方、E2、E3、E4はSSD Toolboxでは確認できず、調べるにはS.M.A.R.T. Monitoring Toolsが必要になる

smartctlコマンドを使ってドライブに0x40コマンドを送ってデータをリセット後、通常作業を60分以上、できれば2時間程度行った後にsmartctlで属性を読み出すとE2、E3、E4のデータが得られるという

E2(画面では226)はSSDの劣化の度合いを1024分割した値。E3(227)はリードライトに閉めるリードの割合、E4(228)は計測時間だ。これらのデータから通常のワークロードを継続したときのSSDの寿命が推定できるという

という具合に小ネタ大ネタを交えた天野氏らしいセッションが続いたのだが、最後に驚きの発表が。天野氏は異動となり、今回のようなセッションはこれが最後になるのだそうだ。異動先については明言を避けていたものの、今後はタブレットなど組み込み系を担当するようである。

というわけなので、少なくともPCユーザー向けのセッションで天野氏を見ることは当分なさそうだが、どこか別の場で目にすることはあるかもしれない。今後の活躍にも期待したいところだ。

天野氏は異動となり、PCユーザー向けイベントでのセッションを担当するのはこれが最後になるのだそうだ。残念だが今後の活躍を期待したい