ルネサス エレクトロニクスは5月18日、同社の2011年3月期通期決算を発表した。売上高は、3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の影響などにより、同第3四半期決算時に発表した想定を下回る1兆1378億9800万円となったものの、構造対策の着実な実行や統合シナジーの効果などにより、統合初年度の目標であった通期での営業黒字を達成し、営業利益は145億2400万円、経常利益が10億3300万円と黒字となったが、純利益は1150億2300万円の損失となった。これは、統合時に決定した構造改革「100日プロジェクト」の実行に伴う特別損失が約670億円に加え、東日本大震災の影響として495億円の特別損失が発生したことなどによる1182億円の特別損失を計上した結果となっている。

ルネサス エレクトロニクスの統合初年度の通期業績

会見する同社代表取締役社長の赤尾泰氏

また、同第4四半期の業績は、前四半期比で半導体売上高が50億円の増収、営業利益は70億円の増益となり、利益の改善は構造改革および統合シナジーにより進んだものの、売り上げは日本国内の市場環境により、下期は減速したという。

通期の半導体製品の売り上げは1兆189億円で、同第4四半期では、前四半期比で、アナログ&パワー半導体の売り上げが増加。その結果、通期では、マイコンとアナログ&パワー半導体の売り上げが、前年度比で半導体売上高全体の伸びを上回る増収となったとする。

2011年3月期の半導体の事業別売上高

さらに詳しく分野別で見ると、マイコンは、自動車向け、汎用向けとも前年度比増収となり、特に中国をはじめとする新興国の、産業・民生機器向けが好調に推移した。また、アナログ&パワー半導体は、パワー半導体やアナログICが、新興国における自動車市場の拡大や電装化率の増加などにより、前年度比で増収となったことから、想定比で若干の下ぶれにとどまったものの、SoCは、モバイル分野における国内フィーチャーフォン向け通信LSIや、PC市場の減速によるPC周辺向けLSIが、前年度比で大幅減収となり、2桁%の増収見込みから一転して減収となったという。

半導体売上高の事業別の詳細

また、地域別の状況は、海外市場が、中国をはじめとする新興国での需要を中心に、自動車向けマイコンやパワー半導体、スマートフォン向けカメラLSI、中小型向け表示ドライバなどが堅調に推移したものの、国内市場については、上期後半以降、自動車・民生分野における需要減に加え、国内フィーチャーフォン向け通信LSIが不振となった。加えて、想定より円高が進行したことによる売り上げの減少も影響したとする。

ただし、営業損益については、合併前の2社合算ベースで前年度は1133億円の損失だったが、売り上げの増加に加え、生産性向上による原価率の改善や設備投資の抑制などによる減価償却費の削減、製品ポートフォリオの見直しなどによる研究開発費の抑制などにより、1278億円の改善となり、通期での営業黒字を達成したという。

2011年3月期の営業損益の各種要因および純損益の各種要因

なお、同社では東日本大震災の影響で前工程5工場、後工程3工場で一時生産が停止したが、最大の被害を受けた那珂工場以外は通常の生産体制に復旧しており、那珂工場も2011年6月初旬より一部で生産再開を予定している。

東日本大震災におけるルネサスの生産拠点の復旧状況

こうした状況を受けて同社では、自社の他工場およびファウンドリを活用した代替生産を進めており、那珂工場の生産再開と代替生産を並行して進めることで、2011年10月には50:50(那珂工場:代替生産)の比率ながら、以前の那珂工場の供給量まで回復できるとの見方を示すが、製品供給状況としては、5月分まではある程度カバーできるとしているが、6月以降は被災前の那珂工場の製品については供給不足にならざるを得ない状況としており、顧客への説明を行っているとする。なお、同工場は同社全工場のウェハ処理枚数の15%に相当しており、6月時点での代替生産能力は全体の10%が見込まれている。

那珂工場の代替生産先としては、200mmウェハラインをルネサス北日本セミコンダクタ 津軽工場およびルネサスの西条工場、外部ファウンドリとしてGLOBALFOUNDRIESが担当し、300mmウェハラインについてはルネサス山形セミコンダクタ鶴岡工場とルネサスの西条工場、外部ファウンドリとしてTSMCが担当する。すでに同社では、統合時に、外部工場(ファブ)まで含めた形で、1つのファブになにか起きた場合でも、他のファブで同等品の生産が可能となる技術統合を目指す「ファブネットワーク」と呼ぶ構想を進めてきており、今回の自社他工場および外部ファウンドリの活用はこうしたネットワークを元にしたものとなっている。なお、西条工場は300mm対応ラインは無いが、マイコンについては従来200mmで生産していたものを300mmラインに移管作業を行っていたとのことで、それを200mmラインの方に戻す形で西条工場が生産を行うこととなったという。

元々ファブネットワーク構想を1年前の統合時より進めてきたが、今回の震災の影響で生産が止まった那珂工場の生産物を自社の他工場ならびにファウンドリに回すことで、製品の供給を維持しようという試みが同構想にある程度マッチした結果となった

なお、こうした被災状況の復旧に対する市場環境の先行き不透明感などを背景に、2012年3月期の業績予想は現在のところ発表はせず、7月ころに発表を予定している事業方針の公開時に説明したいとしている。

東日本大震災による同社の損失/影響