Internet Protocol version 4

APNICの保持するIPv4プールは残り1ブロックを切った。これで通常のIPv4割り当ては終了となり、以降はIPv4インターネット接続を維持するための限定的な割り当てのみとなる。日本へIPv4の割り当てを担当している日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)はIPv4をプールしていない。APNICのIPv4プールが枯渇したことで、日本におけるIPv4アドレス新規取得は実施できなくなった(IPv4インターネットを維持するための限定的された割り当ては実施されている)。

IPv4アドレスプールが枯渇したあとも、IPv4アドレス調達に関する需要は継続する。こうした状況に対して関連組織や企業からは、アドレス調達の手段として、すでに割り当てたIPv4アドレスを流動化する声があがっている。しかし現在のところ、JPNICはIPv4アドレス空間の譲渡等を原則禁止している。変更が認められているのは、組織の吸収合併等においてネットワークが実質的に変更されず組織名のみが変更される場合などに限られている。

JPNICはすでにIPv4アドレスの回収と再分配を実施しており、APNICのIPv4プール枯渇後もこの作業を継続するとしている。しかし、回収および再分配による流動化には限界がある。これを受けてJPNICは、IPv4アドレスの流動化を促すために「IPv4アドレス移転制度」の検討を進めている。APNICをはじめほかのRIRはすでにIPv4アドレス移転制度を実施している。

JPNICが検討を進めている「IPv4アドレス移転制度」に関する資料は次にまとまっている。

現在検討中の「IPv4アドレス移転制度」の概要は次のとおり。

  • 対象アドレス - JPNIC管理下のIPv4アドレス、JPNIC管理下のPAアドレス、特殊用途PIアドレス、歴史的PIアドレス
  • 移転元としての申請資格の範囲 - JPNICと契約締結している組織
  • 移転先としての申請資格の範囲 - JPNICと契約締結している組織/新規に契約締結する予定の組織
  • 最小移転単位 - /24
  • 移転時の手数料 - 徴収の有無は検討中
  • 移転後の維持料 - 移転先が負担
  • 移転時の利用計画の提出 - 検討中

現在JPNICが実施している回収および再分配では、一旦JPNICがIPv4アドレスを回収することになる。一方「IPv4アドレス移転制度」では、移転可能アドレス保有者とアドレス利用希望者が双方でマッチングを実施し、JPNICに対しては変更申請を提出する形で移転作業が実施される。こうした制度を導入することで、IPv4アドレスの流動化が期待できると説明されている。

「IPv4アドレス移転制度」の最大の目的はIPv4アドレスの効率的な再利用を実現することにある。この目的を果たしつつ、買い占めや利益目的の短期転売などに対してどう対処していくのか、実施までにはまだ検討すべき点もある。JPNICは4月28日までを期限としIPv4アドレス移転制度に対する意見を募集している。2011年7月から8月にかけてIPv4アドレス移転制度の運用を開始することを目指している。