日本の未来を変えたとも言われる1867年の歴史的事件「桜田門外の変」。製作費10億をかけてこの事件を完全映画化した『桜田門外ノ変』が、2011年4月21日にDVD発売される。79歳にして、精力的に作品を作り続ける佐藤純彌監督が、自身の最新作を語り尽くす。

佐藤純彌

1932年生まれ。東京都出身。1956年、東映東京撮影所に助監督として入社。1963年に『陸軍残虐物語』で監督デビュー。『組織暴力』(1967年)、『新幹線大爆破』(1975年)、『人間の証明』(1977年)、『野生の証明』(1978年)、『未完の対局』(1982年)、『空海』(1984年)、『男たちの大和/YAMATO』(2005年)など30本以上の作品を監督。最新作は『桜田門外ノ変』(2010年)

政治的テロリズムを肯定しない

――本作は佐藤監督にとって、『男たちの大和/YAMATO』に続いて歴史物です。佐藤監督は、アクション映画や任侠映画など、本当に沢山の作品を手掛けられているのですが、キャリアや年齢を重ねてきて、やはり日本の歴史などを描きたいという気持ちが強くなったのでしょうか。

佐藤純彌(以下、佐藤)「歴史作品が2作続いたのは偶然ですが、日本の過去を振り返り作品を作るということは、これまでの長い監督人生でも、やってこなかった事です。初めての経験で新鮮でしたね」

――「安政の大獄」からの流れで「桜田門外の変」を映像化したドラマや映画はいくつかありましたが、「桜田門外の変」を中心にした映画というのは、あまり記憶にないのですが。

映画『桜田門外ノ変』

安政7年(1860)、水戸藩士 関鉄之介(大沢たかお)は家族に別れを告げ、故郷から出奔した。鉄之介は水戸藩の有志たちと、開国論者の江戸幕府大老 井伊直弼(伊武雅刀)を討つ盟約を結び、江戸に向かったのだった……
(C)2010 『桜田門外ノ変』製作委員会

佐藤「そうですね。大きな流れの中で『桜田門外の変』が描かれたり、歴史的事実からアレンジされて映像化されたことは何度かあるのですが、『桜田門外の変』が中心というのはあまりないかもしれないですね」

――「安政の大獄」で武士の不満が高まり、それから「桜田門外の変」の暗殺に向かうというのが、ドラマとして自然な盛り上げだと思います。『桜田門外ノ変』では、オープニングで暗殺を描いて、それから暗殺の前後を描くという、あえてクライマックスを拒否したかのような作品構成が印象的でした。

佐藤「映画として、クライマックスに暗殺を持ってくると、政治的テロリズムを肯定して賛美するような描き方になってしまいます。僕自身、政治的テロリズムを許容してはいけないという強い想いがありました。歴史的に重要な事実なので、暗殺自体を描くことは必要だと思うのですが、なぜ暗殺が起こったのかという事と、それに関わった無名の人々や時代を、この作品では描きたかった」