『小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記』の著者に聞く!

「小悪魔女子大生」と「サーバエンジニア」──一見、ミスマッチ感が濃厚なキーワードを組み合わせた、ちょっと異色のネットワーク技術入門本が話題だ。『小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記――インターネットやサーバのしくみが楽しくわかる』(aico・ディレクターズ 著/ 村井純 監修/ 技術評論社 刊)である。

シンプルな線で描かれたウサギやクマなどのキャラクターが、ほのぼの&ゆるゆるとした空気感の中で、インターネットやサーバに関する技術を紹介していく本書。添えられる文章もあくまで平易でわかりやすい。とはいえ、「実は経験豊富なエンジニアのオッサンが女子のフリをして描いているのでは?」といった邪推がネット上でささやかれるほど、技術的な的確さも兼ね備えていて、この領域に詳しい玄人衆も納得の内容に仕上がっている。

『小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記』著者のaico氏(右)とディレクターズ社長・加藤慶氏(左)。ディレクターズは、ホスティング事業やサーバ証明書取得代行事業・メディア事業等を行う企業。aico氏は1990年3月生まれで、都内の大学の仏文学科に通う女子大生。ディレクターズにてアルバイト中

今回、著者のaico氏とディレクターズ社長・加藤慶氏にご登場いただき、"異色作誕生のウラ話"といった視点から話をうかがってみた。目の前に現れたのは……小悪魔というより、どこか小動物的なほんわかオーラをまとった、小柄でかわいらしいお嬢さんだった!

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──同名のブログが昨年の夏にTwitterなどで話題となり、今回、注目のもとに書籍化されました。本書の著者はaicoさんとディレクターズの連名になっていますが、aicoさんはディレクターズのアルバイトなんですよね?

『小悪魔女子大生のサーバエンジニア日記』価格:2,079円

加藤 そうです、ウチのバイトです。採用時は、まさかこんな展開になるなんて当然ながら考えていなくて、電話番やお茶出し、ちょっとした調べ物や事務仕事の補助……要は雑用係をやってもらえれば十分、くらいの感覚でした。知人から「こういう娘がいるんだけど、アルバイトで使ってくれない?」なんて、ゆる~く紹介されまして。

aico 私は「ネット関係の会社」くらいしか聞かされていなくて。それこそ、サーバの「サ」の字も知らない状態。でも、企業でインターンみたいに働けるなら、いい経験にもなるだろうし、就職活動で多少は有利になるかなと思ったんです。入ったときは19歳、大学2年生でした(この4月で大学4年生に)。ディレクターズの前は、アイスクリーム屋さんとレストランのホール担当しかバイト経験がありませんでした。

加藤 正直、「ウチに10代のバイトが入ったんですよ」「この子、19歳。若いでしょ」と周囲に自慢できるな、お茶出しのときツカミのネタに使えるな、くらいの感覚で採ったんですよ(笑)。なんかボワーンとした子だな、という第一印象だったし。ただ、意外にも物覚えが早くて、事務処理能力もなかなか高かったんですよね。お、これなら今後、いろいろ振ってもこなしてくれそうだなと。

──それで、件のブログを任せてみようと考えられた、と

加藤 いえ、当初はまったく考えなかったです。イラストが描けることを知らなかったので。

aico まだ出社2、3回目だったんですけど、「今日はお願いできる仕事もないから、とりあえず適当に遊んでて」といきなり放置されたんですよ。で、どうしていいかわからなくて、しばらく机に大人しく座っていたんですけど、それじゃアルバイトにならないし、「何かお手伝いしましょうか?」「やることないですか?」と何度か聞きに行ったんですね。でも、そのたびに「ない!」「好きなことしてていいから!」と突き放されて。自分の席からチラチラと視線を送ったりもしたんですけど、目も合わせてくれない(笑)。それで「もういいや、ホントに好きなことしちゃえ!」と居直って、手帳にイラストを描いて時間をつぶすことにしたんです。

──aicoさんの才能が明らかになり、本書誕生への第一歩が踏み出されたわけですね?

加藤 いや、そんなドラマチックな瞬間ではなかったかな。

aico 気がついたらいきなり後ろに立っていて、「絵が描けるんだ~、ふ~ん」くらいの薄い反応を残して、また放置されました。ヒドイですよね!? 仕事にも職場にも慣れていないころなのに、唐突に「好きにしてて」ですから。

加藤 ただ、そこでイラストを描いている姿を見なければ、この本が出ることもなかったかもしれません。そう考えると「好きにしてて」には意義があったんですよ。まあ、いくら放置されたからといって、絵を描いていたら普通の会社なら怒られるでしょうけど。そこで絵を描くか!? というツッコミもないわけではなかった(笑)。

──絵を描くのはもともと好きだったんですか? マンガを描いたりとか

aico 好きでした。といっても、美術の勉強をしたり、マンガを描たりしていたわけではないので、落書きレベルの「好き」なんですけどね。ホントに自己流です。中学生のころから、授業で取ったノートの片隅とか空白のところにイラストを描き加えたりしてきました。もともと、キレイにノートを取って、あとで見返したときにわかりやすく、楽しく読めるように仕上げるのが好きだったんですよ。それで、「あ、このあたりちょっと淋しいから動物を描き入れたらカワイイかな」「ここが重要って先生が言ってたから、目立つようにしよう」みたいなカ所にイラストを描くようになったんです。この本やブログのイラストも、中高生時代のノートに描いていたイラストと同じような意識で描いているところがありますね。