──ブログの立ち上げは2010年3月とのこと。初期のころからアクセスは多かったのですか?

加藤 とんでもない、しばらくは本当に細々とした感じでした。でも昨年7月、たまたま『小悪魔』のページを見つけられた湯本堅隆さん(エフ・ケーコーポレーション システム開発部長)がご自身のブログ『GoTheDistance』(2010年7月26日のエントリー)で「面白い」と話題にしてくださったんですね。そこから、はてなブックマークのランキングで上位に入ったり、Twitterで話題になった りして、急にアクセスが増えたんです。

──書籍化の話が出てきたのもそのころですね

加藤 ええ。いくつかの出版社さんからお話をいただいたのですが、こちらとしては、ちゃんとした技術解説書として出したい、という希望があった。全体の印象は柔らかいんだけど、一方で技術的な内容もしっかりしていて、専門家が読んでも納得してくれる本にしたかったんです。

──内容はもちろんのこと、余白部分のあしらいや、イラストを用いたページ番号といった遊び心のあるデザイン、カバー裏のおまけなど、見どころが満載の楽しい本に仕上がっていますよね

加藤 それはもう、版元の編集担当さんはじめ、関わったスタッフの方々が頑張ってくださった結果です。加筆修正した部分だけでなく、新規に書き起こしたものも多いので、ブログを読んでくださった方でも新鮮に感じていただけると思います。まあ、想定していなかった新規起こしもあったんですけどね。ブログ初期のころのイラスト原稿がない、とか。

aico まさか本になるとは夢にも思ってもいなかったので、ブログに載せてしまったイラストの原稿なんて、もう必要ないだろうなって。整理することもなく部屋に積んであったんですけど、テスト前でイライラしていたから片付けでもしようと、いろいろなものを一気に捨てたんですよ。で、その他のゴミと一緒にイラストも処分しちゃいました。おかげで、けっこうな点数を改めて描くことになってしまいました。

──夏休み返上でイラストを描いたりと苦労した甲斐もあって、売れ行きは好調なようですね。できあがった本を最初に見たときの感想は?

aico 嬉しい……とにかく嬉しかった。それに尽きます。これがホントに書店に並ぶのかと思うと、何だか信じられなかったです。

加藤 読者の方に評価していただいた大きな要因として、ブログ当初からの意図でもあった「初歩的なこと、基本的なことを丁寧にまとめていく」という方向性がよかったのかな、と改めて感じています。結局、いくら時代が変わって新しい技術が出てきたとしても、ベーシックな部分は変わらないんですよね。仮に5年前、10年前のエンジニアが読んでも理解できるだろうし、5年後に読んでも古くなっていないはず。そういう内容の本にしたかったんです。

──ちなみに、イラストは何を使って描いているんですか?

aico ボールペンです。PILOTさんの「ハイテックC 0.3」で、色は黒です。このペンが鉄板ですね。あ、たまに0.4も使いますけど。これがないと、私はイラストが描けないです。もう何年も使い続けている、大好きなペンですね。

加藤 (小声で)ほら、「PILOTさんとコラボしたいです。小悪魔モデルがほしいです」とかアピールしないと……。

aico あ、小悪魔モデル、ぜひぜひ欲しいです!

加藤 無理矢理に言わせたみたいですね。これではまた「悪い大人の企みに巻き込まれる小悪魔」みたいな印象になってしまう(笑)。

──aicoさんの描くキャラクターは独特の抜け感というか、ほのぼのとした魅力があるので、これからの展開も楽しみですね

上場企業情報サイト「Kmonos(クモノス)」

加藤 ネット関連の技術をイラストでわかりやすく、という方向性は今後も上手く展開していければいいですね。それから、ウチでは上場企業に関するさまざまな情報を提供する「Kmonos(クモノス)」というサイトも手がけていているのですが、そちらでも"イラストでわかりやすく解説"という方向性のコンテンツを拡充していければと考えています。たとえば、上場企業の有価証券報告書。読んでみると面白いことがたくさん書いてあるのに、どうしても文字ばかりで取っ付きづらく、なかなか目を通してもらえない。そこで、有価証券報告書の内容をイラストでわかりやすく再構成して、A4用紙1枚程度のボリュームで提供する……なんてことができたらと思案中なんです。

aico 私は、この年で本を出すなんて、普通ではできない経験をさせてもらったので、もう十分というか……。

加藤 (小声で)ほら、「キャラクタービジネスにも興味あります」とかアピールしないと……

aico キャラクタービジネスにも興味あります!

加藤 結局、僕は最後まで「悪い大人」の印象で終わる、という流れになりましたね。おかしいなぁ。

インタビュー終了後、aico氏がホワイトボードにイラストを描いてくれた