昭和電工は4月11日、将来的な成長が見込めるプリンテッドエレクトロニクス分野において、米NovaCentrixとNovaCentrixが開発した導電性インクを昭和電工が製造・販売するライセンス契約および、NovaCentrixの光焼成技術「Photonic Curing」に対応した導電性インクなどの開発を共同で行う提携契約を行ったことを発表した。また、NovaCentrixの光焼成装置「Pulse Forge」と導電性インク製品「Metalon」に関して、昭和電工の子会社である昭光通商が日本国内と一部アジア地域における代理店販売を2011年4月より開始することも併せて合意した。

NovaCentrixの光焼成装置「PulseForge Photonic Curing」

プリンテッドエレクトロ二クスは、印刷技術を応用し電子部品を製造する技術で、従来の半導体や金属、絶縁体といった材料を個別に成膜する方法に比較し製造工程を簡略化できるほか、真空などの状態を作らないで済むため、安価なディスプレイや太陽電池、有機EL照明などへの応用が期待されている。

NovaCentrixは同分野の重要要素の1つである配線技術で実績を有するベンチャー企業。プリンテッドエレクトロ二クスは、金属粒子を含むインク(導電性インク)を印刷した後、熱処理によってインク内の金属粒子を焼結させて導電性を持つ配線を形成する必要がある。同配線形成においては熱処理が必要となるため一般的に耐熱性の低い樹脂基板への適用が難しいとされているが、NovaCentrixの技術は可視光ランプによる高速焼結であり温度上昇が抑えられることから樹脂基板を使用することができるほか、樹脂基板としてフィルムを使用するため、効率の高いロール・ツー・ロールプロセスでの生産が可能となっている。

昭和電工では、自社の保有する金属をはじめとする無機材料や有機材料の技術を活用することで、NovaCentrixの持つ光焼成技術をさらに生かす導電性インクの開発を共同で進める計画で、現在の導電性インクの性能を改善することにより、現在使用されている銅箔などのバルク品と同等の耐久性や導電性を目指すとしている。

なお、導電性インクはすでにスマートフォンや太陽電池の部材に一部使用されており、現在の市場規模は300億円と推定されている。また2020年には同市場は1000億円に拡大することが見込まれており、昭和電工では今回のNovaCentrixとの提携により成長が見込めるプリンテッドエレクトロ二クス分野での研究開発を加速していく方針としている。