Google会長兼CEOのEric Schmidt氏は、同社が携帯を利用した「モバイルペイメントの市場に参入するか?」と問われたとき「Googleは銀行にはならないし、その領分を侵すこともない」とコメントした。だが現在、同社はNFC (Near Field Communications)を使った同決済システムのテスト運用を計画しており、CitigroupやMasterCardなど、銀行/クレジットカード大手との提携を進めているという。

今回の件は3月15日に米Bloombergなどが報じたGoogleの実証実験計画に端を発する。Bloombergによれば、Googleは4カ月内にもNFCを使ったモバイル決済システムをサンフランシスコやニューヨークといった都市の店舗内に設置し、モバイルペイメントの実験を進める計画だという。この実験には店舗のレジを開発するVeriFone Systemと提携しており、ViVOtechがモバイル決済システム技術を提供する形で、ロサンゼルスやシカゴ、ワシントンD.C.といった都市にも広げていくことになるようだ。翌日にWall Street Journalが出した記事によれば、さらにポートランドの名前なども挙がっており、大都市だけでなく比較的広範囲でテストを行う様子がうかがえる。

ただ、上記の実験ではレジ側のカードリーダーとモバイル決済システムに関する企業のみが列挙されている状態であり、実際の決済を誰が仲介するのかという点が問題になっていた。それに関してWall Street Journalが28日に報じた情報によれば、さらに提携企業としてCitigroupとMasterCardの名前が挙がっており、Google自身が銀行になるのではなく、あくまで旗振り役として実験の中核に位置する形態であることが判明した。モバイルペイメントを巡ってはVisaやMasterが自身のクレジットカードをICチップにしてNFCと連動させる仕組みを模索しているほか、米国では大手携帯キャリア3社がクレジットカード会社のDiscoverと組んでやはり同種のシステム構築を目指すとしている。将来的にはユーザー獲得でシェア争いが激化する可能性が指摘されており、今年後半から来年以降にかけてその前哨戦が展開されることになりそうだ。