自動車保険に加入している人が保険を使わずに1年間経過すると、等級がひとつ上がり保険料は少し安くなります(20等級までの会社で現在20等級の場合、無事故でも等級に変わりはありません)。しかし、ここにきて大手損保が続々と値上げを表明しています。つまり、保険を使っていなくても、20等級であっても、翌年の保険料が上がってしまう可能性があるのです。自賠責保険の値上げのニュースとあわせて、値上げのワケにせまります。

2011年は値上げの動向がハッキリ

2011年1月、大手損保各社が保険料を値上げの方向で見直すというニュースが報じられました。さらに、その数日後には自賠責保険の保険料も値上げが報道され、ドライバーにとってはWショック! でもなぜ同じタイミングで値上げになったのでしょうか? そこには保険を取り巻く大きな環境の変化があるのです。

2009年夏、最も大きなターニングポイントといえる出来ごとが起こります。損害保険料率算出機構という団体が、自動車保険の参考純率を見直し、全体で5.7%の引き上げを行いました。参考純率とは保険料の計算に使われる計算式で、各保険会社はこの計算式を使ったり、目安にしたりして保険料を計算しています。損保各社はこの数値を参考にすることが多いので、ある程度横並びで値上げの方向になることがこの時に決まっていたのです。しかし、どうして参考純率を上げる必要があったのでしょうか? 会社の利益のため? いえいえ、実はハッキリした理由があったのです。

保険会社の苦しい台所事情

任意保険、自賠責保険の両方に言えることですが「保険料と保険金の収支バランスの崩壊」が最も大きな原因です。保険料とは、契約者が保険会社に支払うお金、保険金は事故の時に被害者がもらえるお金です。収支バランスが取れない理由は……

  1. 業界の体質改善による未払い問題の解消
  2. 若者の車離れ
  3. コンパクトカーの人気
  4. 対人賠償など損害金の高額化

……が挙げられます。(1)はユーザーにとって大歓迎でしたが、(2)~(3)はまさに想定外の事象といえます。(2)は少子化に加え、車に乗らない、興味がない若い世代が多く、すなわち保険料をたくさん払ってくれる人の減少になります。(3)は燃費の良い小さな車が人気になり、事故のリスクが減少。リスクが高く、保険料が高い車が減ったため保険料収入の減になります。(4)は世の動向からして、仕方のないところです。

ベテランドライバーが年々増加中

2009年以降、保険会社は企業努力をしながらも、幾度かの値上げを繰り返し、なんとかバランスを保っていました。しかし、ここに来て高齢のドライバーの増加がダメ押しになったのです。

保険契約者の数は団塊世代を中心とした年齢層のボリュームが大きく、人口に比例した動きになっています。問題はその団塊の世代の年齢です。現在60代~70代を迎え、いまも現役で車に乗り続けていらっしゃる方も多いと思います。ベテランドライバーが多いため、20等級前後の割安な等級の方がほとんどです。しかし団塊ジュニア以降の若い世代ほど加入者が少なく、年齢別の加入者はちょうど逆ピラミッドの形になっています。つまり保険料を多く負担すべき人が少なくなっているのです。

高齢ドライバーの事故が増加中

これまで長年保険に加入し、せっかく等級を積み上げてきたのですから、安い保険料で当然だと思われる方もいるでしょう。しかし残念なことに、保険料が安いだけでなく、高齢ドライバーが事故を起こすと死亡をともなうような大事故になってしまうというデータがあります。

日本損害保険協会の調べによると、車対人の事故における死亡事故の割合が全年齢の平均だと66%。しかし65歳以上の事故では実に75%が死亡事故にまで発展してしまっているのです。つまり高齢者ドライバーの増加は「保険料は安く保険金は高い」という、今回の値上げの理由そのものの図式なのです。

2011年の春以降に値上げを表明している保険会社では30歳(もしくは35歳)以上は一律だった年齢条件を10歳区分にすることを決定。これにより40代~50代は最も安くなると見られていますが、それより上の60代~70代はかなり保険料が上がってしまいそうです。

これからの自動車保険

実際に各社の数値が出てみなければ確実なことは言えませんが、値上げがあまりにも大きければ以下のような選択肢があります。

  1. 運転をやめ被保険者から外す
  2. 保険を同居の家族に譲る
  3. 他社で見積もりをとってみる

「ちょうど良い機会だからもう運転を控えよう」という場合は、(1)~(2)がオススメです。しかし告知から外してしまうと、運転時に補償されないのでくれぐれもご注意ください。なお保険の契約者、記名被保険者は同居の親族なら変更することができます。割引率の大きい等級は家族に引き継いでもらうのがオススメです。

(3)については、3月末時点で値上げを表明しているのは大手メガ損保に限られています。他社も追従すると見られていますが、通販型の会社は従来通りというケースが多いようです。「まだまだ現役で乗り続ける」という方は、通販型の保険会社で見積もりを取ってみるのも良いかもしれません。