「問題は仮想化した後で発生する」

クエスト・ソフトウェアは3月9日、「クラウド/サーバ仮想化 導入メリットを引き出す運用管理セミナー」を開催。米国クエスト・ソフトウェアでワールドワイド・サーバ・仮想化&アプリケーション管理担当VPを務めるクリス・アカバー氏が来日し、米国における仮想化運用管理の最新事情を紹介した。

米国クエスト・ソフトウェアでワールドワイド・サーバ・仮想化&アプリケーション管理担当VPを務める

アカバー氏は、クエスト・ソフトウェアが買収したVizioncore社(ビジョンコア社)で2005年からグローバル営業&マーケティング副社長を務め、2010年からはクエスト・ソフトウェアでグローバルな売上、販売モデル、市場戦略の策定などに携わっている。同社の仮想化管理ソリューションを提供する組織、サーバ仮想化グループ(SVG)を統括する人物だ。

同氏は、クエスト・ソフトウェアの顧客の多くが抱える仮想化の課題として、4つを挙げた。1つは、パフォーマンス、可用性、キャパシティをどう確保するかだ。「仮想化の大きな目的はコストを削減し生産性を上げることにあるが、それらを実現するためには、パフォーマンス、可用性、キャパシティの担保が不可欠だ。また、仮想化を進展させていくのに伴って、その規模に合わせた対応も必要になる」(同氏)

2つめの課題は、仮想化環境をどう保護するかだ。物理から仮想へと環境が変わると、環境を管理するためのルールも変わることになるが、その新しいルールに沿ってディザスターリカバリ(災害復旧)やビジネスコンティニュイティ(事業継続)の戦略も立て直す必要が出てくるという。「仮想サーバのデータをどう保護するか、その際の作業負荷のバランスを物理と仮想でどうとっていくのかなどが核になる」(同氏)

3つめは、事業とテクノロジーのバランスをどうとるかだ。仮想化というテクノロジーを導入すると、コスト削減や生産性向上などのかたちでビジネスにもよい影響を与えると考えがちだが、問題は仮想化を導入した後だという。「きちんとした段階を経て仮想化を行っていかないと、むしろ、物理環境よりも仮想化環境のほうが設備投資と運用コストが増大することになりかねない」(同氏)

最後の課題は、仮想化環境において将来的にフレキシビリティやスケーラビリティをどう確保していくかという点だ。仮想化環境を発展させるためには、自動化ツールの適用などのほか、プライベート/パブリック/ハイブリッドなクラウド環境をどう構築していくかも視野に入れておく必要がある。「ある特定の環境を仮想化するだけでなく、長期的にどのようなかたちでクラウドを利用していくのかなどを当初から考慮しておくことがのぞましい」(同氏)。

災害復旧やクラウド構築を視野に入れる

こうした課題にスムーズに対応していくポイントとして、アカバー氏は、仮想化への取り組みを4つのフェーズに分けて考えることを勧める。それぞれ、「移行」、「標準化」、「最適化」、「ROIの最大化」というフェーズだ。

各フェーズでの具体的な対策としては、移行においては、「環境の分析」や「キャパシティプランニング」、「物理から仮想への変換(P2V)」が、標準化については、「データ保護」や「モニタリング」、「パフォーマンス保証」が、最適化については、「ポリシー設定」や「ストレージ設計」が、ROI最大化については、「自動化」や「プライベートクラウド構築」などが中心テーマとなる。

アカバー氏によると、クエスト・ソフトウェアの強みは、この4つのフェーズすべてにおいて、対応ソリューションが用意されている点だという。具体的には、移行においては、環境の分析やP2Vについて「vFoglight」や「vConverter」が、標準化については、データ保護やパフォーマンス監視を「vRanger Pro」、「vFoglight」が、最適化については「vOptimizer Pro」が、ROI最大化は「vFoglight」のSLAやチャージバック機能などが、それぞれカバーしている。

「vFoglight」の画面。単一コンソールから物理、仮想の両環境を監視、操作できる。運用管理ソフトとしてVMware ESXとHyper-Vに対応するのは唯一の製品になるという。KVM環境にも対応を予定している。

講演では、実際の米国事例として、医療保険会社ユナイテッドヘルスケア、米国国務省、ノーフォークサザン鉄道、イリノイ州オークブルック市が紹介された。ユナイテッドヘルスケアでは、物理ホスト400台で1000超のVMを稼動させており、vFoglightの特徴の1つである単一コンソールでの一括管理を用いて、経営レベルから環境の分析、チャージバックの状況などを把握しているという。

また、オークブルック市では、vRanger/vReplicatorを利用することで、災害復旧時のRTO(リカバリタイム)を3日から1時間に、RPO(リカバリポイント)を24時間から4時間に短縮でき、SAN環境で5万ドルかかっていた復旧コストを10分の1の5000ドルにまで削減できたという。

アカバー氏は、今後の製品展開について、vRanger Proでの重複排除技術の適用(High Impact De-duplication)、vFoglight やCloud Automation Platformでのライフサイクルマネジメント、KVM対応、自動サイトリカバリなどを進めていることを説明した。

「vFoglight」と「vRanger」の2011年までの機能ロードマップ(1)

「vFoglight」と「vRanger」の2011年までの機能ロードマップ(2)