宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2011年3月12日、3月14日に引き続き3月16日9時54分頃(日本時間)に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)搭載の高性能可視近赤外放射計2型(アブニール・ツー)を用い、現地の緊急観測を実施した。3月16日の観測は、三陸海岸付近は雲に覆われていたが、福島県沿岸付近を確認することができた。
図1は今回観測した画像全体の様子を示したもので、アブニール・ツーのバンド3、2、1を合成したトゥルーカラー合成画像で表示しており人の目で見た色に近くなっている。なお、明るい白色は雪や雲である。
図2は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日、地震前の2011年2月27日に観測された画像から福島県相馬市小高区付近を拡大したもの。アブニール・ツーのバンド4、3、2を合成したフォールスカラー画像で表示しており、植生(赤色)と雲(白色)が明瞭に区別できるため、地表面の様子をとらえることができる。内陸域は海水が引いてはいるが、依然、沿岸域の田畑が広範囲に冠水している様子が分かる。
図3は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日、地震前の2011年2月23日に観測された画像から、福島県浪江町請戸港付近を拡大したもの。依然、海岸線沿いの田畑が広域にわたり冠水している様子が分かる。
図4は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日、地震前の2011年2月23日に観測された画像から、福島県いわき市八幡町付近を拡大したもの。海岸線沿いの複数の建物が倒壊している様子が分かる。
図5は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日、地震前の2011年2月23日に観測された画像から、福島県いわき市勿来付近を拡大したもの。依然、黄枠内の河口部分が流されている様子および海岸線沿いの平野部が冠水している様子が分かる。
図6は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日、地震前の2011年2月23日に観測された画像から、福島県いわき市小名浜付近を拡大したもの。依然、黄枠の平野部が冠水している様子が見られる。
図7は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日、地震前の2011年2月23日に観測された画像から、茨城県北茨城付近を拡大したもの。14日の観測から変化はなく、黄枠内の堤防が決壊している様子が分かる。
図8は地震後の2011年3月16日と2011年3月14日の画像全体の様子を示した図。黄枠内では、津波の影響と思われる漂流物を確認することができる。
なお、これら取得した画像は、内閣府を始めとする防災関係省庁並びに地方自治体などに提供しており、JAXAでは今後も当該地域を継続して観測する予定としている。 また、JAXAでは、震災後の2011年3月14日12時50分頃(日本時間)に温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)搭載の雲・エアロソルセンサ(TANSO-CAI)で東北地方海岸部の撮影を行っている。
図9左図は地震後の2011年3月14日に観測された画像、右図は震災以前の2011年2月27日に取得された画像で、3月14日の観測では、雲で覆われてない地域にて、宮城県の津波によると考えられる被災地域が確認できた。この画像はTANSO-CAIの紫外・可視域の3つのバンドを用いた合成画像(擬似カラー)となり、赤の線は海岸線、湖沼境界線を示している。また、北部の石巻周辺・北上川流域、 南部の相馬・新地周辺域において、画像の黒くみえるところが海岸線を越えた津波により冠水している領域だと考えられるとJAXAでは説明している。