大容量メモリ搭載を適正コストで実現する「eX5」搭載サーバ

日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業開発 システムズ&テクノロジー・エバンジェリスト 柴田直樹氏

現在のサーバが抱える課題の1つに「メモリの搭載量の限界」がある。CPUの高性能化は順調に進んでいるものの、1台のサーバに搭載できるメモリ容量の伸びはこれに追いつけていない。各社がさまざまな手法で大容量メモリの搭載を実現しているが、手法によってはデメリットもある。

「今日のサーバの利用形態を見ると、CPUのリソースにはまだ余裕がある反面、メモリのリソースは余裕がなくなっています。 業界標準のアーキテクチャでは、メモリ容量を増やそうとすると、CPUも同時に増やす必要があります。そこで、 CPUのリソースは増やさずにメモリ容量を増加させ、それぞれのリソース利用効率を向上させた"マシンバランス"に優れたサーバが求められているのです。 コスト削減の観点から見ても、最近の主流であるCPUコア数に応じてライセンスが課金されるソフトウェアを導入する際、大容量メモリを搭載するサーバはライセンスコストも高額になるデメリットがあります」と、日本アイ・ビー・エム システムx事業部 事業開発 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストである柴田直樹氏は語る。

一方、同社がこうした「サーバのメモリ問題」の解決策として提案しているのが、大量のメモリスロットを搭載して一般的な容量のメモリを大量に搭載するという手法だ。この手法は同社のx86向けサーバ・アーキテクチャ「eX5(第5世代 Enterprise X-Architecture)」に取り入れられており、eX5を搭載するサーバ群はプロセッサ仕様によるメモリ容量の限界を打破し、CPUとメモリのバランスがとれた構成を低価格に実現する。

「eX5搭載のサーバは多数のメモリスロットを搭載しているため、高価な大容量メモリを使わずに大容量のメモリを搭載することができます。メモリ容量を拡張するための外部ユニットとして『MAX5』も用意しており、最上位モデルにMAX5を接続すれば、現在は最大で1.5TBのメモリを搭載できます( これが、eX5搭載サーバのみが持つ大きな差別化要素です)」と同氏。

メモリ拡張ユニット「MAX5」の仕組み

必ずしもすべてのメモリスロットを埋める必要はないため、スモールスタートも可能だ。大容量のメモリを搭載することで、仮想化によるサーバ統合においても集約可能なサーバの台数が劇的に増大する。

「仮想化という点では、1VM当たりの平均メモリ使用量は少なくて済むケースがまだ多いですが、1VM当たり数GBという時代はすぐに訪れると思います。 その場合、やはりメモリスロットが多いというのは投資保護という観点からも重要です。多くのサーバを1台のサーバに仮想化統合した場合、ハードウェアトラブル時の被害が大きくなるという心配がありますが、高い可用性を実現しているインテルのXeon7500番台を採用するなどして、信頼性を確保しています。また、メモリエラー訂正の機能についてもXeon7500番台のメモリエラー訂正の機能を拡張する『Memory ProteXion』という独自機能によって、MAX5に搭載された2つのDRAMが完全に故障した状態でも稼働しエラーも検出し続けます」と語る同氏は、eX5搭載サーバを「IBMの汎用機で培った可用性と信頼性を確保する技術を継承したIBMでのみ実現できるサーバ」と表す。

メモリを保護するための技術「Memory ProteXion」の仕組み

止められないシステムを安定運用できる「BladeCenter」

ハイパフォーマンスかつハイバリューなeX5搭載サーバ群に対し、特に高可用性を重視するユーザーに向けて提供されているのが「IBM(R) BladeCenter(R)」だ。ブレードサーバは各社から発表されているが、その大本となるブレードスタイルを確立したのは同社である。そして、同社のブレードサーバは販売開始時からシャーシデザインが変わっていないという特徴を有する。

「2002年に発売された初代ブレードサーバのシャーシであるBladeCenter Eは、現在も販売されています。もちろん時代ごとに新たな技術を取り入れた製品を発売しているのですが、すべてのシャーシを併売しているのが当社の特徴です。新技術を採用したいお客様には新製品を導入していただき、資産を大事に使い続けたいお客様はシャーシを維持しながらブレードサーバのみを買い換えたり、追加したりしていただくことができます」と柴田氏。

日本IBMの初代ブレードサーバのシャーシ「BladeCenter E」

BladeCenterはネットワークや電源などの主要コンポーネントがすべて2重化されており、高可用性や信頼性が求められる"止められないシステム"の運用にぴったりのサーバだ。また、高可用性が求められる基幹サーバ用途だけではなく、パフォーマンスが要求されるハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)でも採用されている。例えば、世界のスーパーコンピュータの性能ランキング「TOP500」の最新版のデータ(2010年11月版)において、500システム中200システムがIBM製品で、さらに200システム中186システムがx86サーバで構成されており、多くはBladeCenterシリーズが採用されているという。

「BladeCenterはコンパクトな静音ラックもありますので、例えば部門レベルでの導入も可能です。 ブレードサーバはケーブルレスなので、不用意にケーブルなどの配線に触れたなどの理由でシステムを止めてしまうという心配もありません」と、同氏はBladeCenterのメリットを語った。

「グリーン」を意識した大規模スケールアウト型のサーバ「iDataPlex」

もう1つ、IBMのサーバとして注目したいのが「System x(R) iDataPlex(R)」だ。同製品は高集積化とグリーンITを意識したサーバで、冷却効率も高い。

IBMの省電力HPCサーバ「System x iDataPlex」

「System x iDataPlexは、通常の19インチラックと同じ体積のラックをちょうど横向きに置いたデザインの専用ラックを用意しており、最大84ノードのサーバを搭載できますから、結果的に1Uサーバより高密度なシステムを構築できます。弊社の一般的な1U のラックマウント型サーバにおける84ノードの消費電力は約3万2,000ワットですが、iDataPlexは3万ワットで済みます。ラックの背面には液体冷却用扉を取り付けることもでき、 たくさんのサーバで構成されるHPCで必要不可欠になってきている エネルギー効率、冷却効率、スペース効率を提供できる画期的なシステムです。 ITのグリーン化にも貢献できます」と柴田氏。前述の「TOP500」に含まれるx86サーバ中、43システムがiDataPlexで構成されている。

「先ほどご紹介した『TOP500』にランクインしたスパコンをグリーン性能の高さでランクをつける『Green500』では、19位と20位という上位にiDataPlexが入っています。このことからも、iDataPlexが『グリーンなシステム』ということがおわかりいただけるかと思います。 また、iDtaPlexは配線も含めセットアップした状態で工場から直送するので、設置の手間も最小限ですし、最近のスパコンのトレンドでもあるGPUを複数個搭載することも可能です」と同氏は語る。

さまざまな需要にこたえられるラインアップが用意されているIBMのサーバ群。ぜひ導入を検討してみてほしい。