──2011年、企業がネットで効果的に目立つためにはどんな取り組みをすればよいでしょう

中川 結論を先に言ってしまうと、Yahoo! のトップページにあるニュース欄「Yahoo! トピックス」からリンクを貼ってもらうこと。これが現時点では最良の施策だと考えます。そのためには、「ニュースサイトで記事にしてもらえるようなネタを仕掛けて、その記事がYahoo! トピックスに取り上げられる」「Yahoo! トピックスに掲載された記事に関連情報のページとして採用され、リンクが貼られる」といったことが必要になります。Yahoo! トピックスの影響力はとにかく絶大ですから、そこに何らかの形で掲載されることを目指すわけです。

──具体的にはどんな施策が必要になってくるでしょうか

中川 大きくわけると、3つのアプローチがあると思います。1つ目は「プロ集団としての知見を自社サイトにしっかりと蓄積しておきましょう」ということ。専門分野に関するプロの知識をネット上に披露することで、ニュースサイトやYahoo! トピックス、Yahoo! 知恵袋といったサービスから関連情報、参考ページとしてリンクを貼ってもらいやすくするのです。企業内にはさまざな知見・知識が蓄積されているのに、それを死蔵しているケースが非常に多い。当事者からすれば当たり前の知識だったり、専門的すぎてニーズがないだろうと思えるような情報でも、ネットユーザーは関心を持ってくれることがよくあります。別に凝った内容でなくても構わない。たとえば「●●のウーロン茶は味が濃いのにどうして渋くないの?」というような、簡単なQ&Aページとか。それを読みやすいレイアウトで、ページ階層の深くない場所に置いてあげればいい。

そうして自社サイトに人を集めるのに並行して、キャンペーンと通販の機能もサイトに整備しておくのも大事です。端的には、ユーザーをAmazonに誘導する動線を用意しておくのが効果的でしょう。

2つ目は「投資効率を考えて既存サービスを活用しましょう」ですね。たとえば、企業が独自にサーバを立ち上げてサイトやブログを回すのは避けたほうが無難。Yahoo! トピックスに取り上げられたりすると、急激にページアクセスが増えます。アクセス過剰でサーバが落ちてしまい、当該ページが見られないなんてことがこれまで何度も発生しています。せっかく注目を浴びたのにサイトやブログが見られないなんて、情報発信する側として恥ずかしい状況といえる。結果、どれだけ機会損失があるか。だったら、強固なインフラを持っているアメーバブログとかライブドアブログと組んでしまえばいいんですよ。物販をするにしても、自社サイト内にネット通販のシステムを組み込むより、販路をAmazonに特化して、そこへの誘導をちゃんとしてあげる方が余程効率がいい。投資効率を考えたら、インフラが強固で動線ができあがっている既存サービスに乗っかってしまったほうが賢い場合が少なくありません。社内に通販部門の担当者やシステム管理者を置いておくことの人件費、大量アクセスを捌ける太い回線やバックアップをきかせたサーバといった設備投資はバカにならない額でしょう。それと、既存サービスを利用するコストを冷静に比較してみればいいのに……なんて感じることが結構あります。

──では3つ目のアプローチは?

中川 2つ目の項目とも関係してくると思いますが「これまでのネットの常識を疑ってみましょう」という点。トップページがやたらと豪華で演出過剰な企業サイトとかキャンペーンサイトをよく見かけますが、そこにお金をかけるなんてオレはバカだと思います。フラッシュでイメージ動画やら音楽を流したりしても、スキップされてしまうのがオチですから。やりたいなら、スキップ率がどのくらいかシビアに測ってみればいい。たぶんスキップ率95%なんてケースがざらにあると思いますよ。多くのユーザーは、Yahoo! トピックスやニュースサイトの関連リンク、グーグルで上位に表示された検索結果などから個別のページに直接飛んでくるわけで、重たいだけのフラッシュなんか見せられても邪魔でしかない。

「トップページは企業の顔でございます」「フラッシュや音楽で世界観を醸成して、●●社のことをもっと好きになってもらいましょう」みたいな考え方をする企業のウェブ担当者とか広告マンがいますけど、これ15年くらい前から変わっていない考え方じゃないですか。声を大にして「いまは違う! 」と言いたいです。そういう考え方は、そろそろやめましょう。ネットの常識なんて、企業もバシバシぶっ壊していけばいい。既存サービスに乗っかってしまうのも有効な判断のひとつだし、「フラッシュのイメージ動画って、ホントにいるの?」と冷静にジャッジして、排除するのもぜんぜんアリなんですから。