インテル マーケティング本部 エンタープライズ・ソリューション・スペシャリストの田口栄治氏

「仮想化やクラウドは、コストセービングの手段だけではなく、企業を成長させる技術的な基盤になりえる」──インテルのマーケティング本部でエンタープライズ・ソリューション・スペシャリストを務める田口栄治氏は、「ジャーナルITサミット - 2010仮想化セミナー」の講演でそう語り、インテルがそれに向けて取り組んでいる要素技術やビジョンを紹介した。

インテルのクラウドに対する取り組みは「クラウド・ビジョン」というかたちで明らかにされている。田口氏は、同社がクラウドに注力する背景として、「より多くのユーザーが、より多くのデバイスから、より多くのコンテンツに接続する」という大きな環境変化が起こっていることを紹介。具体的には、2015年に全世界では、インターネットに接続される人口は、現状の15億人からさらに10億人増加し、クラウドにつながるデバイスの数も、PCや携帯だけでなく、自動車、TV、家電機器など、現座の2.5倍となる150億台以上のデバイスがインテリジェント化してクラウドに接続され、今よりも8倍のストレージ容量、16倍のネットワーク、20倍のコンピュータ能力が必要になると説明した。

"クラウド化された世界"で求められる4つの条件

「大きなパラダイムシフトの中で求められるインフラストラクチャの条件とは何か。インテルでは、それを効率的、シンプル、セキュア、オープンという4つに整理。その条件を満たす要素技術の提供に力を入れている。クラウドコンピューティングのビジネス上の価値は、新しいアイデアをすぐに展開できるような環境になることだと考えている」(田口氏)

4つの条件のうち、効率的というのは、プラットフォームとデータセンターにおける電力効率の向上などを指している。サーバ機器の省電力化とCPUは密接に結びついているが、インテル(R) Xeon(R) プロセッサー 5600番台では、低電圧プロセッサやインテリジェント・パワー・テクノロジーなどを採用することで、プラットフォーム全体で省電力化を実現。消費電力あたりの性能は年率で40%も向上しているという。

シンプルは、あらゆる場所でイーサネットを利用した、柔軟なインフラストラクチャを構築すること。現在、インテルのXeonプロセッサーは、サーバ機器のみならず、ストレージ機器についても採用されるようになっている。また、仮想化のオーバーヘッドを削減するSR-IOV(Single Root I/O Virtualization)対応など、インテルの技術は、サーバ、ストレージ、ネットワークにおける共通基盤としても利用されつつある。

セキュアについては、インテルTXT(トラステッド・エグゼキュージョン・テクノロジー)やAES-NIを使った暗号化/復号化の高速処理(インテルAES-NI)などが知られている。インテルAES-NIは、Oracle データベース11gで89%、McAfee Endpoint Full Disk Encryptionで42%高速処理できるという結果がでている。

ユーザー、ベンダーの協力体制が不可欠に

最後のオープンについては、ソリューションの互換性を確保したマルチベンダー開発を推進していることを指す。具体的には、IT技術を活用するユーザー団体であるODCA(オープン・データセンター・アライアンス)への支援や、クラウドのソリューションのリファレンス・デザインを提供するインテル クラウド・ビルダーズというプログラムにより、IT部門のクラウド導入支援を行っていることなどだ。この「オープン」に関するインテルおよび業界の取り組みは興味深い。

「クラウド時代に求められるデータセンターの要件は何か、セキュリティをどのように確保していくか。こうしたことは、企業それぞれの取り組みだけでは不十分で、業界が全体として取り組んでいく必要がある」(田口氏)

ODCAの運営会員は、BMW、中国人寿、ドイツ銀行、JPモルガン・チェース、マリオット・インターナショナル、シェル、UBSなど。70社以上のグローバル企業が会員になる純粋なユーザー企業の団体だ。また、インテル クラウド・ビルダーズプログラムには、シスコ、シトリックス、デル、EMC、HP、IBM、マイクロソフト、NetApp、レッドハット、VMwareなどが参加し、相互運用性の高い実証済みのソリューションを提供することを目指している。現在、20種類のリファレンスアーキテクチャが利用可能という。

「インテルは、2015年に世界がどう変化しているかを考え、4つのキーワードにそった内容で、そこまでの道を整備している。そして、それを加速、支援するためのプログラムを提供している」(田口氏)

※ 田口氏の講演動画を以下の「2011 仮想化オンラインセミナー」で無料公開しています。本稿ではお伝えしきれなかったナレッジも紹介しているので、ぜひこちらも併せてご覧ください。