2010年2月に発足したモバイル向けLinuxの「MeeGo」、スマートフォン、タブレットとモバイルがコンピューティングプラットフォームの中心に入りつつある中、MeeGo成功にとって不可欠なのが開発者とエコシステムだ。11月にアイルランド・ダブリンで開催された「MeeGo Conference 2010」で、この部分での取り組みについて説明があったので、これを紹介したい。

Ronan Mac Laverthy氏

開発者を中心としたエコシステムについて、MeeGoの戦略を説明したのは、NokiaのMeeGo開発者支援担当Ronan Mac Laverthy氏だ。

どのプラットフォームでも同じだが、ツールを利用して開発者がアプリケーションを作成し、プラットフォームの上で動くアプリが増えることがユーザー側のプラットフォームの受け入れを促す。このサイクルを回しながら、フィードバックを得てプラットフォームを改善し、これがさらなるアプリの増加とプラットフォームの繁栄につながる。

このような好現象は「Androidで起こっている」とLaverthy氏は認めつつも、MeeGoの差別化は、「容易、無料、包括的なツール、オープンかつ豊富な機能を持ち、さまざまなセグメントに利用できる(クロスカテゴリ)プラットフォーム」と言う。中でも、「MeeGoの強みは、携帯電話とネットブックの両方をカバーしている点だ」とLaverthy氏。

プラットフォームの観点からこれまでの成果と市場の状況を振り返ると、「MeeGo 1.0」から「MeeGo 1.1」ではハンドセットが加わるなどの進化を遂げた。Appleはその間、「iPad」「iPhone 4」最新版をリリースした。一方で、MeeGoは車載情報システムIVIにもテリトリを広げたが、Androidもタブレットで利用され始めており、クロスカテゴリを図っている。「われわれはどうするか。プラットフォームのクオリティを改善する」とLaverthy氏。たとえばハンドセットではセキュリティの改善、APIの追加、他のデバイスへのポーティングなどに取り組むという。

ツールでは、容易さがMeeGoの強みとなる。最初のSDKはインストールが難しいなどの問題があったが、使いやすさと開発の効率化で定評のある「Qt」を統合、MeeGo 1.1ではQt 4.7、Qt Quick、Qt Mobility、OpenGLなどのAPIを持つ。ドキュメンテーションも、1.0では3種類のアプリケーションドキュメンテーションしかなかったが、1.1ではAPIリファレンスと19種類のドキュメンテーションを用意した。それでも、Appleは約1,100ドキュメントがあり、道のりは長い。今後、Qt、Qt Mobilityなど上流プロジェクトからサンプルをポーティングし、APIとツールの利用を促進しフィードバックを得ていくという。

Horace Li氏

MeeGo SDKについての詳細は、Horace Li氏(米Intelの研究子会社Intel Asia-Pacific Research and Developmentのソフトウェア&サービスグループ技術アカウントマネージャ)が別のセッションで説明した。同SDKはQtのIDE「Qt Creator 2.0.1」、ARMおよびIntel(ia32)ツールチェーンを含む。「開発したアプリケーションはデフォルトで、あらゆるMeeGo OSが動く端末で動く」とLi氏。この上に、アプリケーションフレームワークを用意している。現在、NetbookとHandsetがあり、今後も種類を拡充するという。これらのフレームワークはMee APIで協業している。

同SDKは現在、Linux(Fedora、Ubuntuなど)とWindow(プレビュー対応)に対応(Mac OSのサポートも予定しているという)、QEMUまたは実際のMeeGo端末を使ってデバッグを行い、パッケージはRPMを利用する。Linuxでは、デバッグにXephyrを利用することもできる。QEMUは一種の仮想マシンで、Xephyrの場合、MeeGo環境の中にQt Creatorをインストールすることになる。

MeeGoアーキテクチャ

MeeGo開発

MeeGoアーキテクチャ

MeeGo開発

開発したアプリケーションはIntelの「AppUp」、Nokiaの「Ovi Store」があり、新たにアプリケーションストアを立ち上げることもできる。

MeeGoの登録開発者数は4月の6,000人から10月には1万6,000人に増えている。だが、Appleの登録開発者数は4万人。今後開発者ネットワークを作り、活発化すると同時に、オープンという最初の約束を守るとLaverthy氏は述べる。

モバイルでは、現在、Android、iOS、Symbianの3種類があるが、MeeGoはこの中に入り4強の1つになることを目指している。「簡単なことではないが、楽観している」とLaverthy氏。その理由はいくつかある。

最初の理由は、米IntelとフィンランドNokiaという大企業の支援とLinux Foundationの存在だ。次に、MeeGoの進化の速度と最初からクロスカテゴリである点。クロスカテゴリは、すでに競合を超えている部分となる。

次期版のバージョン1.2では品質改善にフォーカスしており、さらなる進化を遂げる。「スマートフォンの人気は、iPhoneからオープンなAndroidに移りつつある。その次はオープンソースのMeeGo、これは論理的な進化だ」とLaverthy氏は自信を見せた。

Tero Kojo氏

MeeGoアプリケーションのサポートについては、プロジェクトマネージャを務めるTero Kojo氏(Nokia)が説明した。

MeeGoでは開発者が作成したアプリケーションを共有できる「openSUSE Build Service(OBS)」を用意している。openSUSE.orgのビルドインフラ技術で、複数のアーキテクチャをサポート、Qtで開発したアプリケーションをハンドセット、ネットブックなどさまざまな端末で試すことができる。

「ソフトウェアの品質は大切」と語るKojo氏、MeeGoではアプリを公開し共有できるオープンな場を提供したいとする。Maemoでも品質保証が課題だったと振り返り、MeeGoでは開発者、デザイナー、テスター、エンドユーザー全員が集まり共有・交換できるコミュニティによるアプリケーションビルドを持つことで、プロジェクト全体の成長を促す、と付け加える。

具体的には、バックエンドでアプリケーション/レポジトリを管理する「BOSS」に対し、アプリケーションの共有リクエストを出すと、BOSSがそのアプリケーションをテスターに公開、テスターがソフトウェアをテストしてフィードバックを送る。開発者はフィードバックを基にアプリを改善し、最終的にはユーザーに高品質のアプリケーションを提供できる、という流れだ。エンドユーザー向けの"Garage Client"とよばれるアプリケーションダウンロードクライアントがあり、アプリをダウンロード/インストールし、フィードバックチャネルから評価できる。

すでにエンドユーザークライアント側はほぼ完成しており、インタフェースとして利用するopenDesktop.orgのOCS(Open Collaboration Services API)はすでにベータとして運用中という。レポジトリもベータ運用中でBOSSもインストール済みだが、ライブフィードバックメカニズムはまだ完成しておらず、評価は可能だが、コメント機能はまだという。今後、テストからアプリケーションを移動するルール、BOSSのプロセスステップなどに取り組むという。