F1の表舞台だけでなく、舞台裏も体験できる!

前述したようなアーケードタイプの遊びきりレースモードもあるが、F1のチャンピオンシップシリーズに身を投じた新人F1ドライバーとなったプレイヤーが優勝を目指す……というキャンペーンモードがメインゲームとなっている。

F1は、「ドライバーの個人技ではなく、チーム戦だ」といわれるが、本作では、そのあたりもエッセンスを抽出してうまく再現されている。レースに勝利して入賞するとマスコミ取材を受けたりすることがあり、その受け答えはアドベンチャーゲームのような3択問答みたいな感じなのだが、このときの発言が、敵ドライバー、チームメイトドライバー、チーム運営側に影響を与えるようになっている。

本作は1年だけでなく、複数年に渡るチャンピオンシップでの奮闘を体験できるようになっており、毎年のシーズン終了後にニュースになる「あのドライバーがあのチームに移籍!?」みたいなF1世界の裏舞台を一人称で体験することになる。つまり、チーム運営側との関係が崩れると、翌年には契約更新の申し出がなくなるかもしれない、と言うことだ。ゲームシステムにおいて、それほどの重要度はないかも知れないが、「マスコミ対応が自分の身の振り方に影響する」というのは面白いゲーム要素だ。なお、新人ドライバーとして優秀な成績を連発すれば、有望選手として、ほかの名門チームから、高報酬での移籍のオファーが来るかもしれない。本作はF1ドライバーの舞台裏まで疑似体験ができるのだ。

雨天コンディションでの過酷なレースも再現される。前走車の水煙の怖さを一人称体験せよ!

本作内でのプレイヤーの熟練度、評価、地位はレベル値で表され、レースで好成績を積み上げれば経験値が蓄積され、経験値が一定値を超えるとレベルがアップする。このあたりはちょっとRPG的だ。

さて、F1レースは、細かいルールがあり、こうした細かいルールも本作では緻密に再現されている。それこそ、各種ルールを守らないと失格したり、ペナルティを科せられたりするし、一部のルールはレース戦略に密接に関係していたりする。その内容たるや、筆者のような、F1初心者には及び腰になるくらい細かい。

例えばピットロードでは時速何km以内に抑えなければならないとか、晴天コンディションのレースではタイヤを2種類必ず使わなければならない(つまり、1度は必ずピットインしなければならない)といったルールがある。このルールを守ること、戦略を組み立てることがF1ファンにとっては楽しみになるのだろうが、カジュアルプレイヤーはそれこそ、ピットの入り方すら戸惑うはずで、「むずかしそう!」ということになる。

でも安心されたし。

『F1 2010』では、難易度「ふつう」設定までは、このあたりを全部システム側に任せることができる。ピットロードではどんなにアクセルをふかそうが速度が抑えられるし、ピットインまでの道筋はちゃんと路面に矢印が出てくれる。タイヤの交換タイミングはチーム監督がちゃんと無線で日本語で(日本語版の場合)指示をくれる。初心者は、F1の小難しいルールや、厳しい戦略展開の雰囲気だけを味わうことができるのである。

本作はレースシステムも本格的だ。練習、予選、本戦の3部構成になっていて、予選の成績で本戦時のスタート位置(スタートグリッド)が決定される。初心者は、まずは、練習走行でコースに慣れる必要がある。知っているコースの場合は練習走行をスキップすることもできるし、予選もスキップすることができて、その場合は最後尾グリッドからのスタートになる。