ハードウェアの性能向上やクラウドサービスの普及などを背景としてデータセンターの増築や新設が各地で相次いでいるが、小誌ではこのほど、TISが都内に建設中の「次世代データセンター」内部を取材する機会を得た。ここでは、普段目にすることはできない建設中のデータセンター内部を紹介しよう。

現在建設中の「GDC御殿山」。外観はほぼ出来上がっているが、現在は来年4月の開業に向けて工事が進められている状況

ターミナル駅から徒歩10分程度の好立地条件

今回取材したTISのデータセンターは、免震構造を持つ地下2階、地上6階の鉄筋コンクリートの建物になっている「GDC御殿山」。場所は「東京都品川区」というところまでしか公表できないが、ターミナル駅からも徒歩10分程度の距離にあり、恵まれた立地条件となっている。

すでに6月に発表済みとなっているが、このデータセンターは建物の環境性能を評価する「CASBEE(Comprehensive Assesment System for Built Environment Efficiency)」で最高ランクとされる「Sランク」の認証を取得していることが特徴の1つとされており、同社によれば「データセンターとしての環境性能では日本屈指のレベル」だという。

地震対策

地震対策は「積層ゴムアイソレータ」と「弾性すべり支承」と呼ばれる2つの免震装置を組み合わせた"ハイブリッド型免震機構"によって実現。建物の側面にも約50cmのクリアランスを設け、地震による地表移動でビルに影響が出ないようにしている。

「GDC御殿山」を支える免震設備(積層ゴムアイソレータ)

「GDC御殿山」を支える免震設備(弾性すべり支承)

建物と地表との間には約50cmのクリアランスを用意

各種配管は極力地表に接しないよう、建物側から吊り下げられる構造になっている

サーバルーム

同施設の延床面積は約2万平方メートル。約3000台のラック収容能力を持ち、同社のデータセンターの中で最大規模となる。

サーバルームは地上階にいくつかのエリアに分けて配置され、最も広いエリアは、小学校の運動会が開けそうなほどの面積がある。

工事中のサーバルームの1つ。小学校の運動会なら開催できてしまいそうなほどの広さ

すでに自社用途向けのラックが一部配置されたサーバルーム

メッシュ構造を採用した天井により、熱の滞留を防ぐ構造になっている。なお、照明は蛍光灯ではなく、全館でLED照明を採用

床下には約80cmのスペースを確保。このような支柱によって1平方メートルあたりの床荷重 1.5トンを実現している

入退室管理

各エリアはICカードと生体認証による入退室管理が行われ、共連れ防止のインターロック方式ゲートが設置される。このゲートでは体重計による判断も行われる。抱き合って!?の共連れも防ぐ。

設置工事中のインターロック方式ゲート。全容は開業時に拝見ということで……

受電・発電設備

データセンターの心臓部とも言えるのが、電力設備だ。同データセンターは66kvの2系統受電となっており、構内の配電設備も冗長化されている。ちなみに同データセンターのPUE(Power Usage Effectives)は1.36を実現するという(一般的に、現在の技術では1.2が限度とされる)。

同データセンターは2系統受電。「1系」「2系」が用意され、通常時は「2系」が稼働する

自家発電機設備は最上階に配置される。備蓄燃料は48時間以上の連続運転が可能とされており、自家発電機が稼動するまではUPS(無停電電源装置)により、無停電で給電される。

自家発電設備。通常は中を見ることはできない

これは特別高圧変電トランス

環境対策

繰り返しになるが、まだ同データセンターは工事中の段階であり、環境対応の観点での「次世代」らしい設備は一部しか見ることができなかった。しかし、取材時にその一部である自然光を採光するユニークな仕組みが取り入れられていたので、最後に紹介しておこう。

自然光を採光する仕組み。まだミラーが設置されていないが、屋上に配置されたこの部分から採光し……

このような長~い管を通じて約46m下のロビー階 エレベーターホール付近まで光を届ける(これは採光用の管を下から見上げたところ)

オマケ: 取材時は屋上に巨大な日立製空調機を設置している最中だった。この屋上には、三洋電機製の太陽電池モジュールも設置されている