三洋電機は12月3日、Si結晶系太陽電池のセル変換効率としては世界最高クラスとなる21.6%を達成したHIT太陽電池の量産を開始、2011年2月より欧州で販売を開始することを発表した。

同製品は、同社従来製品「HIT太陽電池 Nシリーズ」(セル変換効率21.1%)を高効率化したモデルで、製品名は「HIT N240」となっている。またセルの変換効率向上だけではなく、セル間を接続しているタブを従来の2本構成から1本あたりをより細くし3本構成へと変更した新タブデザインおよびARコートガラスの採用を行うことで、モジュールの変換効率としても19.0%を達成している。

HIT N240の概要

三洋電機 執行役員ソーラー事業部長の前田哲宏氏

同社執行役員ソーラー事業部長の前田哲宏氏は、「HIT太陽電池の性能向上として、n型単結晶Siとa-Si層の海面でのトラップの低減に加え、光量を増やすためのタブの細線化、および抵抗の低減を3つのポイントとして開発を行ってきた」とするが、「研究段階の最高クラスのセルを活用すれば、もう一段上にいける」とし、その際には再び、世界最高変換効率を掲げた発表ができればとした。

HIT太陽電池の仕組みと高効率化に向けた取り組み

また、太陽電池を活用したグリーン化に向けてパナソニックのノウハウなども導入。「単なる製品を使っている時のみの省エネだけでなく、生産時における省エネの実現も図っていきたい」と意欲を示す。実際、poly-Siの状態を100%とすると、それを溶かし太陽電池用インゴットの状態からロスが始まり、特にウェハへとスライスする際やセル工程でのSiのロス率が高く、モジュール工程を終えた段階では「Siの使用効率は30%程度。これを50%まで引き上げたい」とするほか、製造に際し消費するエネルギーについても、「poly-Siの製造時も使用するが、インゴットの引き上げから、ウェハ/スライス、セル化、モジュール化で消費されるエネルギー量については、HIT太陽電池であれば、10カ月程度の発電で回収することが可能。しかし、創エネということを考えれば、これだけでは不十分。製造工場のクリーンルームの省エネ化や温度管理などの間接的な部分のエネルギー低減も図り、発電効率の改善による取り出せるエネルギー量の増加と平行して回収速度を上げ、さらなる創エネの実現を目指す」とした。

製造時のエネルギーや材料ロスを減らすことも省エネにつながる

さらに、「HIT太陽電池はWあたりのコストでは高い部類に位置している。しかし、例えば、太陽の位置を追って稼動するシステムなどと連携して発電効率を向上させることで、Whあたりのコストでは競合と戦えるようにできる。また、インゴット、セル、モジュールともに増産計画を進めており、生産規模の拡大による低コスト化も目指す」とするほか、パワーコンディショナなどの販売も進めており、そちらの高効率モデルの増産、拡販なども含めて、市場シェアの拡大を目指し、2015年にはグローバルシェアトップへ入る取り組みを行っていくとする。

各生産能力は現時点でのもの。生産能力の拡大に向けた投資は継続しており、2011年にはさらなる生産能力を達成することとなる

そうした意味では市場がどれだけ伸びるかという点もポイントとなるが、「世界市場の規模は今後も拡大していくことは確実。欧州ではドイツがFIT(Feed-in Tariff)の枠を下げるが、イタリア、フランスが堅調に拡大を続けているし、英国もFITをスタート、全体としては市場拡大が続いている。また、米国が大規模発電市場を中心に伸びることが見込まれ、2010年では1.3GW程度だが、2011年では2.0GWを超すところまで成長。日本も2011年末までは補助金制度が継続することが決定し、少なくともそこまでは需要が堅調に推移する」との見方を示した。

各国・地域の太陽電池市場予測

なお、同社では将来的にはセル変換効率23.0%を量産品として、現状のHIT太陽電池よりも低コスト化も実現しつつ2013年までには市場に出したいという意向を示しており、遅くとも2012年にはそれに向けた準備を行い、2013年で一気に、さらなる高効率太陽電池の販売を行うことを目指すとするほか、それと平行して研究開発として、24%、25%といったより高いセル変換効率をいかに達成していくか、その技術をいかに早く量産展開へと適応していくかの技術開発を進めていくとしている。

前田氏とHIT N240