NECは11月30日、東京大学、産業総合研究所ナノチューブ応用研究センターとの共同研究との成果として、低価格で大面積な回路製造が可能な「インクジェット印刷法によるカーボンナノチューブ(CNT)トランジスタ」で高速駆動と信頼性の向上を両立しながら、トランジスタ個々の特性を安定した素子を開発したことを発表した。

プラスチック基板に印刷したCNTトランジスタ

印刷CNTトランジスタ(拡大写真)

インクジェット印刷法は、従来のディスペンサ印刷法と比べて、より微細な回路が作成可能だが、インクジェット印刷法に適した粘度などのインク特性の実現は困難であった。今回、研究チームは、半導体成分と金属成分が混在するCNTにおいて、トランジスタに必要な半導体成分のみを効率よく精製する技術を開発、インクにおけるCNTを高純度化することに成功した。

また、インクに用いる添加剤を最適化し、CNTを高濃度化(~20ppm)。高純度・高濃度なCNTインクを利用しインクジェット方式で線幅70μmの回路を作成することで、CNT密度を増大し、従来比約10倍の移動度(5.1cm2/Vs)と、オンオフ比約10000のCNTトランジスタを開発し、素子駆動における信頼性も確保した。

さらに、基板へのCNTインク塗布後の添加剤除去工程において、従来の純水洗浄をIPA蒸気洗浄に変更。これにより、従来課題だった添加剤除去時における基板からのCNT脱落を抑制し、密着性を向上させることに成功。CNTを素子上に残しながら、添加剤の効果的な除去を実現したことで、複数のCNTトランジスタにおける性能のバラつきを、従来の34%から13%に向上させた。

今回の成果の概要

なお、NECでは今後もさらなるCNT密度の向上を目指し、有機トランジスタの100倍の移動度を有する印刷トランジスタの開発に向けた研究開発を継続し、将来は、開発したトランジスタを用いて、高速スキャン対応フレキシブルセンサアレイや大面積入出力デバイスへの応用を目指すとしている。