半導体市場の統計をまとめている業界団体WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)の日本支部「WSTS日本協議会」は、2010年11月30日に東京・大手町で記者会見を開催し、2010年~2012年(暦年)の世界半導体市場の予測値を公表した。

左からWSTS日本協議会副会長の永島靖氏(エルピーダメモリ)、同会長の草間宏貴氏(ルネサス エレクトロニクス)、同副会長の小川敏夫氏(東芝)

2010年の世界半導体市場は前年に比べて32.7%増と大幅に伸び、3,004億ドルとなる見込み。2009年以前に最大だった2007年の2,556億ドルに比べても17.5%増えており、過去最高となる。なおWSTSは半導体市場を四半期ごとに集計しており、今回の予測値では2010年第3四半期までが実績値、2010年第4四半期以降が予測値となっている。このため、2010年の半導体市場が過去最大規模に拡大することは、確実とみられる。

世界半導体市場の実績と予測(地域別)

世界の半導体市場は2007年にピークを迎えた後、DRAM価格急落と世界同時不況の影響を受けて2008年にマイナス2.8%、2009年にマイナス9.0%と2年連続でマイナス成長に落ち込んでいた。今年は過去2年のマイナスを一気に取り戻す、急激な成長を達成することになる。

2010年を地域別にみると米国市場の好調ぶりが目立つ。前年比40.7%増と大きく伸びる。アジア太平洋(日本を除く)市場も好調で、同35.3%増と急増する。欧州市場は同26.6%増、日本市場は同21.7%増となる見込み。製品別ではMOSメモリが前年比57.5%増ときわめて好調で、ディスクリート(個別半導体)も同39.5%増と急激に回復する。

2011年の世界半導体市場は、前年比4.5%増の3,138億ドルとWSTSは予測した。2010年の33%成長から、一転して一桁成長へと減速する。2010年第4四半期は市況が軟化しており、2011年第1四半期~第2四半期も市況軟化の影響が残るとみる。半導体市場が順調に拡大するのは、2011年第3四半期以降になるもようだ。

ここで市況の軟化とは、具体的にはDRAMの価格急落を意味する。2011年の予測値を地域別と製品別に区分けすると、MOSメモリ製品だけがマイナス成長となる。予測値は前年比6.1%減である。MOSメモリを構成する主要な製品はDRAMとNAND型フラッシュメモリであり、WSTSの予測では2011年にNAND型フラッシュメモリ市場は拡大を維持するものの、DRAM市場は縮小する。

なおこれらの数値はすべて米ドル・ベースであり、日本円ベースでみていくと2011年の日本半導体市場は15.3%成長となり、米ドル・ベースの21.7%成長に比べて成長率が低くなる。為替交換比率が大きく変化しているからだ。2009年の円ドル交換比率は1ドル93.4円であるのに対し、2010年の円ドル交換比率は1ドル88.5円で、5円ほど円高に移行している。

円ベースでみた日本の半導体市場は2010年に4兆1,271億円となる見込み。過去最高を記録した2007年の5兆7,497億円には、遥かにおよばない。2012年の予測値でも4兆4,276億円であり、2007年はもちろんのこと、10年ほど前に好況で記録した2000年の5兆451億円すら超えられない、厳しい状況が続く。

日本半導体市場の実績と予測