マイクロソフトの1社提供で、TBSが週水曜日深夜24時55分から放映している「カタリダス~MAKE IT GREAT~」。毎回、「賢人」と呼ばれる著名人が登場し、PowerPoint 2010を駆使しながら、聴衆を前にプレゼンテーションを行うというユニークな番組だ。

今回、特別にこの収録現場を取材することができた。どんな模様で撮影が行われているのか、その様子をお伝えしよう。

TBSの深夜番組「カタリダス」は毎週水曜日 深夜0時55分

この番組の最大の特徴は、時代を生み出す各ジャンルの「賢人」が、小さな劇場でプレゼンテーションを行う点にある。しかも、撮影は撮り直しなしの1回きりという、語る方も撮る方も緊張感を持った撮影現場となっている。

「ビジネスマンが仕事でプレゼンテーションを行う際も、一度きりというの緊張感、失敗できない不安がある。そうした臨場感を番組のなかに持ち込みたかった」とTBSテレビ情報制作局情報センター情報二部 高橋一晃氏は語る。「途中で言葉が詰まったり、パワーポイントの画面がなかな切り替わらなかったりといった臨場感もそのまま生かしている。画面から伝わってくる緊張感は、ほかの番組にはないものだろう」と続ける。

「賢人の言葉や真剣な様子を見て、人生の勉強になった、あるいは明日の仕事をがんばろうという気になったという声を視聴者からもらっている。深夜の番組にはない雰囲気が受けている」と、番組制作に携わるグーモ・平山幸介取締役最高戦略責任者は語る。

TBSテレビ情報制作局情報センター情報二部・高橋一晃氏

グーモ・平山幸介取締役最高戦略責任者

今回プレゼンテーションを行った関根勤氏 ((C) TBS)

この日の収録は、11月10日に放映されたタレント・関根勤氏がプレゼンテーターとして出演する回。

事前に行われるプレゼンテーターと制作スタッフ、マイクロソフトの社員が参加する入念な打ち合わせを経て制作されたPowerPointの資料は、関根氏の要望で前日深夜まで修正が行われた。修正はマイクロソフトスタッフが直接行っている。

「番組スポンサーは、一般的には制作されたものに対して意見をいう程度。最初の打ち合わせからスポンサーが参加するのは異例といわれる」と、マイクロソフトのインフォメーションワーカービジネス本部Office製品マーケティンググループ 飯島圭一エグゼクティブプロダクトマネージャは苦笑する。

撮影場所は、都内の舞台小屋。「スタジオや大きなホールを使用するのではなく、小さい舞台でプレゼンテーションを行ってもらうことで、より雰囲気がでるようにした。またせり上がりの装置を使用できる場所を選んだのも、緊張感を演出する上で重要なものになっている」とTBSテレビ 高橋氏は語る。

スモークを焚くといった演出はあるが、それ以外はPowerPointによるプレゼンテーションのみといった姿勢を貫く。プレゼンテーションの資料が表示されるのはタテ2.4メートル×ヨコ2.88メートルという最新鋭の大型LEDディスプレイだ。

収録場所は都内の舞台小屋を使用している

座席数も決して多くはない

LEDディスプレイはタテ2.4メートル×ヨコ2.88メートルという大規模なもの

収録直前に一度リハーサルが行われるが、ここで関根氏はPowerPointの一部修正を依頼。文字の背景に炎の動画を追加した。前日まで、この炎を入れるかどうか迷っていたが、現場でのリハーサルで炎を追加することに決めた。

「通常、一度完成した素材は、撮影現場では修正が利かない。しかし、パワーポイントであればすぐに素材を修正できる。この点では制作現場にも新たな驚きがあった」とTBSテレビの高橋氏は語る。

ただいまリハーサル中!

わずか15分ほどの休憩を挟んで、いよいよ本番の収録だ。

舞台がせり上がってくると、観客が立ち上がって拍手。いよいよ待ったなしの収録が始まった。

関根氏は、片手に持ったリモコンでPowerPointを操作しながら、話を展開する。話術に長けた関根氏のプレゼンテーションは笑いが随所に盛り込まれ、観客を魅了していく。この臨場感はテレビでもそのまま伝わったはずだ。

約15分間のプレゼンテーションを終えた関根氏は、「ちゃんと伝わったかな」と心配そうなコメント。だが、観客はスタンディングオベーションで関根氏のプレゼンテーションを讃えた。

本番中の関根氏。話術のレベルはさすがに高い! ((C) TBS)

せり上がりから舞台に消えた関根氏は、そのまま楽屋トークの収録へ。その様子も会場のLEDディスプレイに表示される。間髪入れずに楽屋トークの収録。会場のD-BOYSの質問にも関根氏は、自らの経験をまじえて丁寧に答える。

そして収録がすべて完了した。この間、約30分。番組では最後にPowerPoint 2010の利用方法を紹介する、スタジオ撮影のミニドラマが放映されるが、30分番組の収録としては、ほとんどすべての収録素材を使うことになる短時間さだ。

「番組制作現場には、収録したもののなかから画像を選りすぐり、編集作業によっていい番組に仕上げるというスタイルが定着しているだけに、ほぼすべての収録素材を使用するという手法には当初は戸惑いがあった。だが、これが最も臨場感を伝えることができる手法であり、それに向けた制作スタイルが確立している」(グーモ・平山氏)とする。

番組は全10回の予定で、これまでに映画監督の堤幸彦氏、クリエイティブディレクターの箭内道彦氏、ブランドプロデューサーの藤巻幸夫氏、演出家の白井晃氏、オーナーシェフの渡邊明氏。関根氏の放映で7回目となった。これまで当初の目標を上回る視聴率になっているという。

最終決定ではないが、番組で使用したPowerPoint 2010のデータは、今後、MSNサイトのカタリダス特設コーナーでダウントロードできるようにすることも考えているという。どんな風にすれば、「賢人」と同じカッコいいプレゼンテーション資料が作れるかといったこともこれを通じて知ることもできるだろう。

プレゼンテーションに悩んでいるビジネスマンは一度見てみる価値がある番組だといえる。

収録終了後に出演しているD-BOYSと記念撮影する関根氏