コロナは27日、ナノミストサウナ「ナノリッチ」の体験ルームを東京・北青山にオープンした。体験ルーム新設の狙いは、2007年から開始した水の粒子を細かくする独自技術「ナノサイズ(超微細)水破砕技術」をコアにした「アクア・エア事業」を本格展開することにある。

同社独自技術により鮮度が保たれた紫陽花を手にする、コロナ 代表取締役社長 内田力(つとむ)氏(中央)

アクア・エア事業では、これまでナノミストサウナなどの健康増進のための「体を温める」、温風を使わずに微細な水で乾燥を防ぐ「加湿」、生花などを長持ちさせる「鮮度保持」という3つの分野を柱として開発を進めてきた。

3つの柱で展開するアクア・エア事業

これまで、コア技術を搭載した商品はコロナの本社所在地である新潟県などを中心に販売してきたが、今回、東京都内の不動産会社とのコラボレーションにより、首都圏マンション向けに新たに販売を開始。具体的には、超微細水粒ナノミスト発生機をマンション設備として室内に埋め込むものだ。今後は、「マイナスイオンと暮らす家。」をキャッチフレーズに、居住者がナノミストとマイナスイオンで満たされた部屋に住めることを訴求ポイントに置き販売していく予定だ。

ナノサイズのミストと、スチームや雨との大きさを比較

ナノミストが小さいため、サウナ内に持ち込んだ雑誌も濡れない

今回、ナノリッチの体験ルームを開設したのは、販売推進の一環として、実際にナノミストの魅力を感じてもらうため。ナノリッチは超微細水粒ナノミストによる38~42℃程度の低温ミストサウナである。従来のドライサウナと比較し、低温であるため体への負担を抑えながら発汗できるという特徴がある。くわえて、ミストの大きさは10~50nmという肌の毛穴よりも小さいサイズのため、肌への浸透がいいとされており、さらには一般的なミストのように水濡れ感もない。そのため、湿度が90~100%に保たれているにもかかわらず、サウナの中で本や新聞を読んでも、紙はほとんど濡れない。

ナノリッチ導入例。ナノリッチでは超微細水粒ナノミストをつくりだす際、レナード効果により、約100億個のマイナスイオンが生成される

したがって、ミストサウナでありながら、サウナ内で読書などが楽しめるのがナノリッチのもう一つの特徴だ。ちなみに、ナノリッチの価格は、2人用スタンダードが178万5,000円、内装がヒノキパネルになっているタイプが210万円。このほか、1人用スタンダードが157万5,000円、ヒノキタイプが178万5,000円、小型1人タイプが115万5,000円になっている。

コロナが独自の水破砕技術にこだわる理由

ナノミストを発生させる方式は複数あるが、コロナが独自の水破砕技術にこだわるのには理由がある。コロナはどのようにナノミストを生成させているかというと、独自の回転する金属網に水を衝突させる方式をとっており、ナノミストサウナではお湯を破砕することで、温かいミストを生成して室内に満たしている。他の方式と比べて、コロナの方式は小さい水の粒が生成可能であること、装置が小型化できるといった特徴がある。人の毛穴よりも遥かに小さいので肌の表面のすみずみまでいきわたるうえ、髪の毛の太さよりも細いため、髪の内部まで浸透し、キューティクルを引き締める効果も期待できる。

7月末に採取した紫陽花を会場に展示し、生花などを長持ちさせる「鮮度保持」の技術をアピール

そのほか他社で活用しているナノミストの生成方式には電極式・放電式というものがあるが、こちらと比べても、コロナの水破砕技術によるナノミスト発生方式は連続して大量のナノミストが発生できるというメリットがあるという。また、コロナは空気中の水分ではなく、水道水から引いたきれいな水を利用するため、発生するミストが清潔でもある。もう一つ、水破砕技術は少ない水でナノミストを生成できる節水タイプであることも省エネが重要視されている今の時代に合致している。コロナが水破砕技術にこだわるのは、これらのメリットがあるからだ。

コア技術である、水の超微細化技術。ナノサイズのミストとマイナスイオンを大量に生成するという

水の粒が大きい、連続して大量のミストがつくれないといった従来方式の課題を解決した

このほか、超微細水粒ナノミストの機能には、生花などを長持ちさせる「鮮度保持」があり、小売・流通産業からの期待も寄せられている。超微細水粒ナノミストの中で保持した紫陽花は7月末に採取した後、約3カ月も枯れずに花を咲かせたまま鮮度を保っていた。同様に、桜の花が4カ月保持された記録もある。今後は、鮮度保持機能を活用し、保冷器や冷蔵庫などへの応用でさらなる展開が予想される。

歴史をたどると、コロナは1952年に戦後初の「加圧式石油コンロ」を、そして1955年には日本初となる「加圧式石油ストーブ」を開発した会社だ。最近では、世界初のエコキュートを開発した実績もある。数多くの新規開発を経て、現在では石油ストーブのシェアNo.1を維持し続けている。コロナはオンリーワン技術を応用し、製品化することで、これまで多くの業績をあげてきた。

2001年4月には、世界初のエコキュートを販売開始したコロナ

水破砕技術をコア技術としたアクア・エア事業の展開はコロナにとって、次の新しい製品群を生み出す、重要な事業として位置づけられている。今回の、本格的な事業展開は、今後、コロナが新しい事業分野を確立できるかどうか、成否を分ける大きな分岐点となる。都心のマンションに多数設置することができるか。コロナの動向から目が離せない。