次期Flash Builderプレビュー版公開

Adobe Flash Builder 4は、オープンソースのFlashアプリケーション開発フレームワークであるAdobe Flexを利用して、FlashアプリケーションやAIRアプリケーションを開発することができるEclipseベースの統合開発環境である。Adobe Syetemsは10月25日(太平洋夏時間)、その次期バージョンとなる「Adobe Builder "Burrito"」(バージョン4.5にあたるリリース。"Burrito"は開発コード)のプレビュー版を、Adobe Labs内にて公開した。

Adobeは25日より3日間に渡ってユーザカンファレンス「Adobe MAX 2010」を開催中であり、リリースはその最中での出来事。同カンファレンスでは、Burritoのテーマや新機能について、同社シニアプロダクトマネージャであるAndrew Shorten氏とFlexチームのSameer Bhatt氏が説明した。

Andrew Shorten氏

Sameer Bhatt氏

Shorten氏によれば、Burritoのリリースは次の4つのテーマに重点を置かれているという。 * モバイルおよびマルチスクリーン対応のアプリケーション開発 * FlexおよびActionScriptによる開発の体験の向上 * デザイナーと開発者間の開発ワークフローの改善 * プラットフォームサポートの強化およびパフォーマンスの向上

Shorten氏とBhatt氏はこの各テーマについて、それぞれ新機能のポイントをデモを交えながら紹介していった。

Burritoにおけるマルチスクリーン対応

まずモバイル端末やマルチスクリーンへの対応については、同時にリリースされたFlex SDKの次期バージョン「Flex SDK "Hero"」(バージョン3.5にあたる。"Hero"は開発コード)にも関連したものである。Heroでは従来通りのコンポーネントやスキンを用いて開発されたアプリケーションを、変更を加えることなくモバイル端末上でも動作させることができるようになる。

たとえば、Heroにはアプリケーションコンポーネントやタッチコントロールなどといったモバイル端末特有のUIパターンが追加されているほか、パフォーマンスについてもモバイル端末で高速に動作するようチューニングされる。

Burritoは、このようなHeroの機能を最大限に活用し、モバイル端末やタブレットPCをターゲットとしたアプリケーションを、デスクトップのアプリケーションの場合と同様に構築することが可能となる。具体的には次のような項目がアップデートのポイントとなる。

  • Flex SDKおよびActionScriptプロジェクトのターゲットとしてAdobe AIRが動作するモバイル端末を指定できるようになった
  • プログラミングモデルとツールワークフローの一貫性の確保
  • デスクトップアプリケーションとその他のアプリケーションでコードを共有できる
  • ローンチからデバッグ、パッケージングワークフローを改善

これによって開発者は、ターゲットとする端末の種類に関わらず、アプリケーションのロジックにのみ意識を集中することができるようになるという。

Android端末上で動作するTwitterアプリケーションの開発デモ

Flex/ActionScriptの開発体験の向上

Burritoでは、FlexやActionScriptのコーディングの効率を向上させるさまざまな新しい機能やツールが提供される。主なものを以下に挙げる。

  • MXMLやActionScript、CSSのコードテンプレートの作成や共有
  • Flex SDKやカスタムメタデータに対するコード補完のサポート
  • コーディングタスクの高速化
  • レイアウトやスタイルの作成を手助けするデザインビュー(オフにすることも可能)
  • ドラッグ&ドロップのビジュアルフィードバックの追加

その他、正式公開までにはユーザからのフィードバックを元にしたさまざまな変更が加えられる予定とのことである。

デザイナと開発者の協調

Adobeでは、デザイナと開発者の間でシームレスに成果物の受け渡しを行い、開発をスムーズに進められるようにするためのツールとして「Flash Catalyst」をリリースしている。これは、Adobe IllustratorやPhotoshopなどで作成したデザインコンテンツを元に、実際に動作する形のアプリケーションをコーディングレスで構築することができるツールである。

Catalystを導入した開発現場では、開発者はデザイナよりCatalystの成果物(Flexプロジェクトとしてエクスポートする)を受け取り、それをFlash Builderに読み込んだ上で、より高度なロジックのコーディングを行えばよい。しかし、従来のCatalystではFlash Builderによって変更が加えられたプロジェクトを読み込むことができなかったため、成果物の受け渡しはあくまでもデザイナから開発者への一方通行のみであった。

このような状況が、BurritoとCatalystの次期バージョンであるFlash Catalyst "Panini"(バージョン1.5にあたる。"Panini"は開発コード)によって改善される。PaniniではFlash Builderによって変更されたプロジェクトの読み込みがサポートされる。またBurrito側でも、Catalystのプロジェクトやライブラリをエクスポートできるようになる。したがって、デザイナと開発者がお互いに成果物を受け渡し合いながら、相互に連携してアプリケーションの開発を進めることができるようになる。

その他、FlexプロジェクトがCatalystと互換性があるかどうかを自動でチェックし、問題がある場合には解決方法を探すといった機能も組み込まれるという。デザイナと開発者の連携の不備はアプリケーション開発の現場において長年の頭痛の種であった。AdobeはCatalystによってその解決策を提供したわけだが、今回のリリースによってそれがより強力になったというわけだ。

最新技術の導入とパフォーマンスの向上

Flash BuilderはEclipseベースの開発ツールだが、Burritoはその最新版であるEclipse 3.6(コード名"Helios")をベースに再構築されている。Mac OS X上のCocoaもサポートする。その上で、Flex SDK 3.5 (Hero)やAdobe AIR 2.5、Flash Player 10.1など、それぞれ最新のバージョンを取り入れており、最も新しい技術をいち早く利用することができる環境となっている。

また、大規模なFlexプロジェクトにも対応しており、50以上のライブラリや1,000以上のファイルを含むようなプロジェクトでも問題なく使用できることを確認しているそうである。もちろん全体のパフォーマンスも大幅に向上している。

Burritoのプレビュー版はAdobe LabsのFlash Builderのページよりダウンロードすることができる。またHeroやPaniniについても、同じくAdobe Labsにてプレビュー版が公開されている。開発チームでは、正式公開に向けてユーザからのフィードバックを募集しているとのことである。