米AppleによるiTunesへのサブスクリプションサービス導入の噂はこれまでにも何度も流れているが、こうした動きは同社によるLala買収後にさらに注目されることになった。米New York Postの10月8日(現地時間)の記事によれば、現在Appleは大手レコード会社と同サービスの提供に向けた交渉を進めているという。いよいよ噂が現実のものになりつつあるのかもしれない。

New York Postによれば、AppleのiTunes担当役員のEddy Cue氏が数週間前に大手レコード会社を対象にしたビジネス交渉を進めていたという。ある情報提供者によれば、その内容は10~15ドル程度の月額料金で音楽を自由に聴けるサービスについてであり、その提供形態についての踏み込んだ話もあったとのこと。音楽業界側もこの提案には乗り気なようで、伸び悩む音楽ビジネスの新たな利用形態と収益源を模索しているようだ。

こうした音楽業界側の動きの背景には、新しい音楽サービスに対する危機感がある。例えばサブスクリプションのカテゴリでいえば、人気のPandoraの音楽ストリーミングサービスは掛け流しのラジオに近いものがあり、既存のiTunesのようなダウンロード型とは違ったビジネスモデルを提供している。一方、欧州で人気のSpotifyなどは、好きな楽曲を選んで再生可能な点はダウンロード型に近いものでありながら、広告挿入と引き替えに無料で音楽を楽しめる点に特徴がある。CNETはこうしたSpotifyの攻勢を理由に大手レコード会社との交渉を進めているAppleの様子を報じており、こうした広告を利用した無料の音楽サービスが、将来的にレコード会社の収益に悪影響を及ぼす可能性を指摘している。

Apple自身はサブスクリプションベースのストリーミングサービスを提供していたLalaの買収を完了させながらも、ライセンス譲渡の問題からLalaのサービスをそのままiTunesに転用することができず、レコード会社との再交渉が必須となっている。今回のNew York PostとCNETの報道は、Appleのサブスクリプションサービス提供に向けた交渉が活発化しつつある様子を示している。