こちらの記事でもお伝えしたYahoo! JAPANのiPhone用アプリ「ガンダムAR」。ARでモビルスーツを再現するというユニークなアプリが誕生した背景について、ヤフー R&D統括本部の髙田正行氏と、蒲田信弘氏にお話をうかがった。

ヤフー R&D統括本部
髙田正行氏

ヤフー R&D統括本部
蒲田信弘氏

――今回の「ガンプラ30周年記念特集」における、iPhone用アプリ「ガンダムAR」のARでモビルスーツを再現するというアイデアはどのように生まれたのですか?

髙田正行氏(以下、高田氏)「以前ローソン様が『お台場の1/1ガンダムを見てARエヴァンゲリオンを発想した』とコメントされていましたが、デジタルという部分を外して考えてみれば、お台場ガンダムこそがARとも言えるのではないでしょうか。まさしく数億円かけたARですよね。そして今回、静岡で再びRG1/1ガンダムが展示されると発表されてから、多くの方々の『グフやザクもあるといいのに』という声を聞き、『誰かがボールを拾わなくちゃいけないな』という思いを抱きました。そこで今回の企画をご提案させていただいたという次第です。ARを使うという点については、2010年4月の企画スタート当初から出ています。次に登場させるモビルスーツの選択ということになったのですが、まずは初代ガンダムのライバル、シャア専用ザクだろうと。そして2010年9月18日から『機動戦士ガンダム00』の新作映画が公開されるということで、ダブルオーライザーが選ばれました」

蒲田信弘氏(以下、蒲田氏)「通常はブランドの管理という観点から、新旧のガンダムが並ぶということはあり得ないのですが、今回は特別に『お祭り』ということで許可をいただいています。まさに夢の競演です」

髙田氏「シャア専用ザクだけでなく、ダブルオーライザーも表示可能ということで、アプリの名前を『ガンダムAR』としています」

ダブルオーライザーはアーケードゲーム『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』のCGデータを利用している

――モビルスーツのCGデータはどこから入手されたのですか?

蒲田氏「バンダイナムコゲームス様から特別にご提供いただくことができました。ゲーム用に開発されたデータで、ダブルオーライザーに関しては『機動戦士ガンダム エクストリームバーサス』という新作ゲームで使われている最新データです。ゲームのデータを使う長所としては、陰影がはっきりと再現されているという点で、表示した時に影の入り方が非常に美しいんですね」

髙田氏「今回のように短期間のイベントのために、専用の3DCGデータを用意するというのは非常に難しい話になりますので、ご提供いただけたことに感謝しています」

――「ARで巨大ロボットを再現する」という企画という点では、これまでエヴァンゲリオン初号機やマジンガーZといった例がありますが、こうした事例を参考にされた点はありますか?

髙田氏「直近では箱根のエヴァンゲリオン初号機ですね。エヴァンゲリオン関連の企画で、関係者の方々とご一緒する機会などもあり、参考にさせていただいた部分もあります。その上で、Yahoo! JAPANは日本全国、あらゆる世代の方々にお使いいただいているメディアですので、静岡ホビーフェア限定ということではなく、どこにいらっしゃる方でも楽しんでいただくという点を重視しました。また今回はガンプラのお祭りですから、初めてプラモデルの1/144ザクを手にした時のような、無邪気な遊び方をしていただければという思いがあったんですね。そうした理由から、『ガンダムAR』ではマーカー型ARも取り入れています。マーカー型ARの機能も入れるという点については、企画スタート当初から強くご提案させていただきました。いまTwitterなどを見ていますと、飼われている犬と並べて撮影されている方がいらっしゃったりして、いろいろな楽しみ方をしていただいています。まさにそういう形で遊んでいただくのが今回のアプリの狙いですね。ちょうどプラモデル『RG1/144シャア専用ザク』の発売も発表されたばかりですし、アプリで遊んでいるうちに、"またプラモデルを作ってみようかな"という気持ちになっていただければ嬉しいです」

――「ガンダムAR」アプリにはTwitterとの連携機能もありますね。なぜ、この機能を付けたのでしょうか?

髙田氏「基本的にソーシャル機能については取り入れて行きたいという方針があります。TwitterだけでなくmixiやFacebookなどにも対応したいですね。今回は開発スケジュールという制限があったため、単純にTwitterのモバイルサイトを呼び出す形になっています。本来は『アプリで撮影した写真を直接貼付する』機能も実現したかったのですが、Twitter側でOAuth(※Web認証技術の一種)の全面採用に踏み切るなど流動的な状況があったため、複雑な機能を盛り込むことについては避けました」

――「静岡AR」についてですが、静岡ホビーフェアが会場になるということで、工夫や苦労された点はありますか?

蒲田氏「まずはARのモビルスーツをどこに立たせるかという点ですが、事前にRG1/1ガンダムがどのように配置されるかという概要をいただいていたので、その右側に立たせるということで大幅には決めていました。しかしその時点では周囲の店舗の配置がつかめていなかったので、最終的な位置の決定は、現場に行って微調整を行うという形で対応しています。さらにその場でサンライズ様、バンダイ様を含めて、どこから見たら一番格好良く見えるか、ガンダムを見に来たお客様に混乱が発生しないかといった点をトータルに考えた上で、現地で最終調整しました。現場では様々な方々にご確認いただいたのですが、表示されたモビルスーツを目にすると、皆さん『おおっ!』と反応されるんですね。その姿を見るだけで、作業の疲れも吹き飛びました(笑)」

――「静岡AR」で、ARが体験できる範囲の制限はどのように決定されたのですか?

蒲田「今回『RG1/1ガンダム』が設置されている場所の周辺がガンダムゾーンと呼ばれているのですが、それがおよそ半径100メートルということで、警備や安全上の理由からその中に入らないと表示されないように設定しています。また表示される時間帯についても、ホビーフェアの会場がオープンしている時間帯に合わせています。東静岡駅(ホビーフェアの最寄り駅)から会場に向かうコンコースを歩いていると、ちょうどガンダムが視線に飛び込んできます。そこで皆さん最初に写真を撮影されるんですね。その場所でアプリを使われてしまい、混乱が起きることを避けたかったのです。そこで距離を制限することになりました」

なお、「ガンダムAR」アプリの公開期間は2010年9月30日までとなっている。
(執筆 小林啓倫)

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